6-1 予報精度の評価:適中率・空振り率・見逃し率とは?【気象予報士試験対策】

予報がどれくらい正確だったかを客観的に検証(評価)することは、予報技術の向上のために不可欠です。

気象予報士試験では、「雨が降るか降らないか(カテゴリー予報)」、「気温は何度か(数値の予報)」、「降水確率は何%か(確率予報)」など、予報の種類に応じた適切な評価指標の使い分けや、実際の計算問題が頻出します。各スコアの「分母が何か」「値はどうなれば優秀なのか」をしっかり押さえましょう。


1. カテゴリー予報の評価(降水の有無・警報など)

「雨あり / 雨なし」のように、現象の有無を予報する場合の評価です。
まずは、ある期間(例:100日間)の予報と実況の結果を以下の「分割表(2×2のクロス集計表)」に整理します。すべての評価式はこの表の $A, B, C, D$ から作られます。

実況あり (現象が起きた)実況なし (起きなかった)合計 (予報回数)
予報あり$A$ (適中)$B$ (空振り)$A+B$
予報なし$C$ (見逃し)$D$ (適中)$C+D$
合計 (実況回数)$A+C$$B+D$$N$ (全数)

【例題データ】 全 $N=100$ 日
$A$ (予報通り雨): 30回、 $B$ (予報したのに降らず): 20回、 $C$ (予報せず降った): 10回、 $D$ (予報通り降らず): 40回

1-1 基本的な評価指標(適中・空振り・見逃し)

  • 適中率
    全体のうち、どれだけ正解したか(現象あり・なし両方の適中)。
    $$\text{適中率}=\frac{A+D}{N}$$

例題計算: $(30+40)/100 = 0.70$ $\rightarrow$ 70%

【弱点】 大雪など「めったに起きない現象」の場合、「起きない ($D$)」回数が圧倒的に多くなるため、適当に「毎日起きない」と予報するだけで適中率が高くなってしまい、実力を正しく評価できません。

  • 見逃し率
    全体のうち、予報していなかったのに現象がおきた割合。
    $$\text{見逃し率}=\frac{C}{N}$$

例題計算: $(10)/100 = 0.20$ $\rightarrow$ 10%

  • 空振り率
    全体のうち、予報したのに現象がおきなかった割合。
    $$\text{空振り率}=\frac{B}{N}$$

例題計算: $(20)/100 = 0.20$ $\rightarrow$ 20%

1-2 応用的な評価指標(スレット・バイアス)

防災気象情報では、上記の適中率の弱点を補うため、以下の2つが特によく使われます。

  • スレットスコア (Threat Score: TS)
    「予報なし実況なし ($D$)」の回数を除外して計算する指標です。大雨や警報など、めったに起きない現象(レアな現象)の予報精度を測るのに適しています。
    $$\text{スレットスコア}=\frac{A}{A+B+C}$$
    • 範囲は $0 \sim 1$($1$ に近いほど優秀)。
  • バイアススコア (Bias Score: BS)
    当たったかどうかではなく、「予報回数と実況回数のバランス(偏り)」を見る指標です。
    $$\text{バイアススコア}=\frac{A+B}{A+C}$$
    • $1$: 完璧なバランス(予報回数と発生回数が同じ)。
    • $1$ より大きい: 実況よりも「起きる」と予報しすぎている(過大予報)。
    • $1$ より小さい: 実況よりも予報を控えている(過小予報=見逃しが多い恐れ)。

2. 数値予報の精度評価(気温予報など)

「25℃」のように数値を予報する場合の評価です。予報値を $F$ (Forecast)、実況値を $O$ (Observation) とします。

  • 平均誤差 (ME: Mean Error / バイアス)
    誤差 $(F – O)$ の単純平均です。予報が全体的に高めに出るか、低めに出るかの「癖」が分かります。
    $$ME=\frac{\sum(F-O)}{N}$$
    • 【注意点】 プラスの誤差(高すぎ)とマイナスの誤差(低すぎ)が相殺されるため、「MEが0だからといって予報が優秀とは限らない」のが試験のひっかけポイントです。
  • 二乗平均平方根誤差 (RMSE: Root Mean Square Error)
    誤差の大きさを評価する最も一般的な指標です。誤差を2乗して符号(プラスマイナス)を消してから平均し、平方根(ルート)をとります。
    $$RMSE=\sqrt{\frac{\sum(F-O)^2}{N}}$$
    • 値が $0$ に近いほど優秀です。
    • 誤差を2乗するため、1回でも大きく外れた日があると数値が跳ね上がる(ペナルティが大きい)という性質があります。

3. 確率予報の評価(降水確率など)

  • ブライアスコア (Brier Score: BS)
    「30%」などの確率予報がどれくらい現実に近かったかを評価します。実況値を「現象が起きたら $1$、起きなかったら $0$」として、予報確率との差を2乗して平均します。
    $$BS=\frac{\sum(\text{予報確率}-\text{実況値})^2}{N}$$
    • 例:予報80%($0.8$)で雨が降った($1$)場合 $\rightarrow$ $(0.8 – 1)^2 = 0.04$
    • 値の範囲は $0 \sim 1$ で、$0$ に近いほど精度が高い(優秀)ことを示します。

4. 精度の比較評価(スキルスコア)

「10%の確率でしか雨が降らない砂漠」で「毎日晴れ」と予報すれば、適中率は90%になります。こうした気候特有の「当てやすさ(難易度)」の影響を取り除き、予報技術そのものの実力を評価するのがスキルスコアです。

  • スキルスコア (Skill Score)
    $$SS=\frac{\text{実際の適中数}-\text{偶然の適中数}}{N-\text{偶然の適中数}}$$
    ※偶然の適中数 $S = \frac{(A+C)(A+B) + (B+D)(C+D)}{N}$
    • $1$: 完全な予報(誤差ゼロ)。
    • $0$: 根拠のない予報(気候値など)と全く同じレベル。
    • プラス: 根拠のない予報よりも精度が高い(予報技術に価値がある)。
    • マイナス: 根拠のない予報よりも当たらない(逆効果)。

【試験対策:比較対象となる予報】
スキルスコアの計算の基準(根拠のない予報)として、以下の2つがよく使われます。

  • 気候値予報: 「明日の天気は過去30年の平均(平年値)と同じになる」とする予報。
  • 持続予報: 「明日の天気や気温は、今日と全く同じになる」とする予報。

5. まとめ:試験対策チェックリスト

  • スレットスコア: 「予報なし実況なし ($D$)」を含まない。大雨などレアな現象の評価に使う。
  • バイアススコア: $1$ より大きいと、実況よりも予報回数が多い「過大予報」である。
  • 空振り率と見逃し率: 空振り率の分母は「予報回数」、見逃し率の分母は「実況回数」。
  • MEとRMSEの違い: RMSEは $0$ に近いほど優秀。MEは相殺されるため、$0$ だからといって優秀とは限らない。
  • ブライアスコア: 確率予報の評価に使い、$0$ に近いほど優秀
  • スキルスコア: プラスであれば、気候値や持続予報(根拠のない予報)より精度が高いことを意味する。