2-4 気象衛星観測

気象庁が運用する「ひまわり」などの衛星観測について解説します。

1. 原理:何を測っているのか?

気象衛星は、地球から放たれる電磁波(光や熱)をセンサーで捉えています。

  • 放射: 地球表面や雲、大気から宇宙空間へ向けて放出・反射されるエネルギー。
  • 観測の仕組み: 衛星搭載の放射計で地球を走査し、その強弱を画像化します。
    • 太陽の光を反射した強さ $\rightarrow$ 可視画像
    • 物体が出す赤外線(熱)の強さ $\rightarrow$ 赤外画像・水蒸気画像

2. 静止衛星と極軌道衛星

気象観測に使われる衛星は、軌道によって大きく2つに分けられます。

種類代表例高度・軌道特徴メリット・デメリット
静止気象衛星ひまわり (日本)
GOES (米国)
Meteosat (欧州)
赤道上空 約36,000km
地球の自転と同じ速度で回る。
地球から見て常に同じ場所に止まって見える。 常に同じ範囲を連続観測できる。
× 極地方(高緯度)は歪みが大きく観測しにくい。
極軌道衛星NOAA (米国)
MetOp (欧州)
上空 約850km
北極と南極を通る軌道で周回する。
地球が自転するため、毎回違う場所を通過する。 地表に近いので解像度が高い。極地方も観測可能。
× 同じ場所は1日に数回しか観測できない。

3. 気象衛星ひまわりによる観測

現在は「ひまわり8号・9号」が運用されています。先代(6・7号)に比べて性能が飛躍的に向上しました。

  • 搭載センサー: AHI (Advanced Himawari Imager)
  • バンド数:16バンド(可視3、近赤外3、赤外10)。
    • ※以前は5バンドでしたが、カラー合成(トゥルーカラー再現)や雲粒子の判別が可能になりました。
  • 観測頻度:
    • 全球観測(フルディスク):10分ごと
    • 日本域観測:2.5分ごと(※実技試験で台風や積乱雲の移動速度を計算する際、この頻度が重要になります)
  • 空間分解能: 赤外画像で2km、可視画像で最良0.5km。

4. 画像の種類と特徴(3種の神器)

試験で必ず問われる3つの画像の「白・黒」の定義を完璧に覚えましょう。

① 可視画像

引用元:気象庁HP
  • 原理: 雲や地表面が太陽光を反射する強さを観測(人間の目と同様)。
  • 利用可能時間: 昼間のみ(夜は暗いので見えない)。
  • 白く映るもの: 厚い雲、積乱雲、雪面。(太陽光をよく反射するため)
  • 暗く映るもの: 海面、地表面、薄い雲。
  • 特徴: 雲の「厚さ」や「表面の凸凹(テクスチャ)」がよくわかります。霧などの低い雲の発見に有効です。

② 赤外画像

引用元:気象庁HP
  • 原理: 物体から放出される赤外線の強さ(温度)を観測。※ステファン・ボルツマンの法則から温度が高いほど赤外線が強く放出される。
  • 利用可能時間: 24時間(昼夜問わず)
  • 白く映るもの: 温度が低いもの(=高度が高い雲、背の高い積乱雲)。
  • 暗く映るもの: 温度が高いもの(=海面、地表面、高度が低い雲)。
  • 特徴: 雲頂高度(雲の背の高さ)がわかります。「白い=背が高い」です。

③ 水蒸気画像

引用元:気象庁HP
  • 原理: 赤外線のうち、水蒸気に吸収・放射されやすい波長(6.2µm帯)を観測。
  • 見ているもの: 対流圏中層〜上層の水蒸気量。
  • 白く映るもの: 湿っているエリア(水蒸気が多い)。
  • 黒く映るもの: 乾燥しているエリア(水蒸気が少ない)。
  • 特徴: 雲がない場所でも、大気の流れ(上層の気圧の谷、ジェット気流など)を可視化できます。
    • 暗域: 乾燥域から空気の沈降している場所を読み取り、トラフ(気圧の谷)の解析に使われます。
画像見ているもの白い(明るい)部分黒い(暗い)部分
可視反射光厚い薄い雲、地面
赤外温度高い雲(低温)低い雲(高温)、地面
水蒸気中上層の水蒸気湿潤乾燥(沈降流など)

5. 画像の解析事例

実技試験で頻出の雲パターンとその特徴です。

① 温帯低気圧のライフサイクル

低気圧の発達に伴い、雲の形は規則的に変化します。

引用元:気象庁HP

1.発達期: 雲の北縁が盛り上がる「フックパターン」や、葉っぱのような形をした「バルジ(クラウドリーフ)」が現れる。これは暖気移流による上昇流を示唆します。

引用元:気象庁HP

2.最盛期: 低気圧の中心に向かって螺旋状に雲が巻き込む。

引用元:気象庁HP

3.衰退期: 雲のバンドが低気圧中心を取り囲むようにさらに巻き込み、寒気側の雲(ドライスロットによる切れ込み)が中心まで入り込む。

② 霧と層雲

夜間の放射冷却などで発生する、地表にべったり張り付いた雲です。

  • 可視画像: 真っ白で滑らか(のっぺりしている)。地上の地形(盆地や谷)の形に沿って見える。
  • 赤外画像:暗い(灰色〜黒)
    • 理由: 霧の頂上(雲頂)が低く、地面の温度とほとんど変わらないため、赤外線では地面と区別がつかないからです。
  • 判別: 「可視では見えるが、赤外では見えない」のが霧・層雲の特徴です。

③ 積乱雲

激しい雨や雷をもたらす背の高い雲です。

  • 可視画像: 白くて輝きが強い。表面が団塊状(ボコボコしている)で、影ができることもある。
  • 赤外画像:真っ白(最も明るい)
    • 理由: 圏界面付近(-50℃以下)まで発達するため、非常に温度が低く映ります。
  • 特徴: 風下側に薄く広がる雲(かなとこ雲)が見えることがあります。

④ テーパリングクラウド

にんじん状雲とも呼ばれます。

引用元:気象衛星センターHP
  • 形状: 風下に向かって幅が広がる「ニンジン」や「三角形」のような形。
  • 構造: 先端(風上側の尖った部分)で次々と積乱雲が発生し、風に流されながら衰退して広がっていく構造(バックビルディング型)。
  • 危険性: 線状降水帯の一種であり、集中豪雨をもたらす危険な雲パターンです。

③ トランスバースライン

ジェット気流沿いの巻雲に見られる特徴的な縞模様です。

引用元:気象衛星センターHP
  • 形状: 雲の流れ(主軸)に対して直角方向に、魚の骨のような細かい縞模様が並ぶ。
  • 意味: 風速の水平シアー(場所による風速の差)が大きく、乱気流が発生している可能性が高いことを示します。

⑥ 地形性巻雲

山岳の影響で発生する雲です。

引用元:気象衛星センターHP
  • 形状: 山脈の風下側に広がる。山脈の位置にへばりついて、動かないように見える(風は通り抜けているが、雲の発生位置が固定されているため)。
  • 赤外画像: 白く映る(高度が高い)。
  • 意味: 上空で強い風が山にぶつかっていることを示唆します。

まとめ:試験対策のポイント

  • 可視と赤外の併用:
    • 「可視で明るく、赤外で暗い」 $\rightarrow$ 霧・層雲など(低くて厚い)。
    • 「可視で明るく、赤外で明るい」 $\rightarrow$ 積乱雲・乱層雲など(高くて厚い)。
    • 「可視で暗く、赤外で明るい」 $\rightarrow$ 巻雲など(高くて薄い)。
  • 水蒸気画像:
    • 「暗域」を見つけたら、トラフの東側乾燥空気の流入(ドライスロット)を考慮する。