私たちが生活している地表付近の空気は、常に地面(または海面)の影響を強く受けています。
太陽で地面が温められれば空気も温まり、地面の凹凸があれば風は摩擦を受けます。
このように、地表面からの摩擦や熱エネルギーの供給などの影響を直接受けている大気の層を大気境界層と呼びます。
1. 大気境界層とは
大気境界層の厚さは、昼夜や天候によって大きく変わりますが、概ね地上から高さ $1 \sim 2km$ 程度までです。
自由大気との違い
大気境界層の上にある、地面の影響をほとんど無視できる層を自由大気と呼びます。両者は以下のように明確に区別されます。
| 項目 | 大気境界層 | 自由大気 |
|---|---|---|
| 力の釣り合い | 気圧傾度力、コリオリ力、摩擦力 | 気圧傾度力、コリオリ力 |
| 風の吹き方 | 等圧線を横切る (地上風) | 等圧線に平行 (地衡風) |
| 空気の流れ | 乱流(渦)が卓越しており、不規則 | 比較的滑らかで層状 |
| 熱の輸送 | 乱流による輸送が活発 | 主に大規模な空気の移動(移流) |
大気境界層の構造
大気境界層は、さらに細かい層に分けられます。昼間(対流時)の典型的な構造を見てみましょう。
- 接地層:
- 地表に最も近い、厚さ数十m程度の薄い層(境界層全体の約10%)。
- 風速や気温の鉛直変化(勾配)が非常に急激な場所です。
- 混合層:
- 接地層の上にある、境界層の主体となる厚い層。
- 活発な乱流によって上下の空気がよくかき混ぜられています。
- 移行層/ エントレインメント層:
- 大気境界層の「蓋(ふた)」にあたる部分です。
- ここには通常、気温の逆転層(上ほど暖かい層)があり、下の活発な乱流が自由大気へ飛び出していくのを抑え込んでいます。
💡 試験対策のイメージ
沸騰したお湯の鍋を想像してください。
- 接地層: 鍋の底の金属に触れているギリギリの水。
- 混合層: ボコボコと対流しているお湯全体。
- 移行層: 鍋の水面。ここから湯気が外(自由大気)へ逃げていきます。
2. 対流混合層
よく晴れた昼間、地面が太陽に温められると、上昇気流(熱対流)が発生します。これにより、境界層内の空気が上下に激しくかき混ぜられます。この状態の層を対流混合層と呼びます。
試験では、このときの気温や風速などの鉛直分布(グラフ)の特徴がよく問われます。「よく混ざっている=均一になる」という点がポイントです。
対流混合層の鉛直構造
以下の模式図は、昼間の発達した対流混合層における各要素の高さ方向の変化を示しています。(縦軸が高さ $z$、横軸が各要素の値です)
① 気温 ($T$)

対流混合層の温度は、乾燥断熱減率に沿って一定の割合で低下します。
② 温位 ($\theta$)

空気塊は乾燥断熱変化しているので温位は保存され、ほぼ一定(垂直)になるのが最大の特徴です。接地層においては、摩擦が大きく、混合がうまくいかないため地表の熱の解放が追いつかず、下層ほど温位が高いです。
③ 風速 ($V$)

上層ほど摩擦が小さくなるため、風速が大きくなりますが、混合層内では鉛直輸送が盛んであり空気塊運動量も均一に混ざるためほぼ一定となります。
④ 混合比 ($w$)

混合層では、水蒸気もかき混ぜられるため、凝結しない限りは、温位と同様に混合比はほぼ一定となります。
3. 接地逆転層
風が弱くよく晴れた夜間に現れる、大気境界層のもう一つの顔です。
夜になると、地面は放射冷却によって熱を奪われ、急速に冷えていきます。すると、地面に接している空気から順に冷やされていきます。
- 特徴: 下層ほど気温が低く、上層ほど気温が高い状態になります。これを「気温の逆転」と呼びます。
- 安定性: 重い冷気が下に、軽い暖気が上にあるため、大気は非常に安定します。
- 影響: 対流が抑えられるため、自動車の排気ガスなどの汚染物質が地表付近に滞留しやすくなります(スモッグの原因)。また、飽和すると霧(放射霧)が発生します。
📝 まとめ
- 昼間(加熱時): 不安定な「対流混合層」が発達。温位や混合比は鉛直方向に一定になる。
- 夜間(冷却時): 安定な「接地逆転層」が地表付近に形成され、乱流が抑えられる。
この昼と夜の変化が、大気境界層の大きな特徴です。
