4-2 降水短時間予報:ナウキャストとの違いを徹底解説【気象予報士試験対策】

降水短時間予報は、現在から少し先(半日強)までの雨量を非常に細かいメッシュで予測する情報です。大雨災害時の避難行動の判断や、河川・ダムの管理などに広く利用されています。

学科試験(専門知識)では、ナウキャストとの明確な仕様の違い(予測対象の物理量や解像度)や、「なぜ2つの全く異なる予測手法を合成しなければならないのか」という観点を頻繁に問われます。


1. 降水短時間予報の基本情報

まず、試験で最も引っかかりやすい「ナウキャスト」との根本的な違いを押さえておきましょう。ナウキャストが「その瞬間の雨の激しさ(降水強度:mm/h)」を予測するのに対し、降水短時間予報は「1時間でどれくらい雨水が溜まるか(1時間積算降水量:mm)」を予測の対象としています。

この数字の組み合わせ(予報期間、更新頻度、解像度の切り替わり)は暗記必須です。

項目降水短時間予報の仕様
予報対象1時間降水量(ある時刻までの「前1時間」の積算降水量)
予報期間15時間先まで(※防災対応強化のため、以前は6時間でしたが延長されました)
更新頻度・6時間先まで:10分ごと
・7時間〜15時間先まで:1時間ごと(毎正時)
水平解像度・6時間先まで:1kmメッシュ
・7時間〜15時間先まで:5kmメッシュ
初期値解析雨量(レーダーと雨量計を組み合わせて作った精度の高い実況値)
引用元:気象庁HP

2. 予測手法:2つの手法の合成

降水短時間予報の最大の特徴であり、学科試験で必ず狙われるのが「時間の経過とともに、予測の作り方(重み付け)を連続的に変えている」という点です。

これを実現するために、特性の異なる以下の2つの予測手法を合成しています。

2-1 補外予測モデル(実況の移動)

  • 仕組み: 初期値である「解析雨量(現在の雨雲)」の動きから移動ベクトル(風に流される方向と速度)を計算し、「今ある雨雲がそのまま形を保って移動する」と仮定して外挿(延長)する手法です。
  • メリット: 実況の雨量分布を忠実に引き継ぐため、予測開始直後(1〜3時間先)の精度が極めて高いのが特徴です。
  • デメリット(限界): 物理法則を計算していないため、地形による雨雲の発生や、大気不安定による「新しい雨雲の発生・発達・衰退」を一切予測できません。時間が経つにつれて急激に精度が落ちます。

2-2 数値予報モデル(MSM・LFMによる力学的予測)

  • 仕組み: メソモデル(MSM)や局地モデル(LFM)が物理方程式を用いて計算した、大気の状態変化に基づく降水予測です。
  • メリット: 地形性降雨や、これから新しく発生・発達する雨雲のポテンシャルを表現できるため、予測後半(長時間の予測)において威力を発揮します。
  • デメリット: 数値予報特有の「スピンアップ現象(計算開始直後は降水量が過小評価される現象)」があるため、予測の初期段階では実況(補外予測)の精度に勝てません。

【試験のポイント】時間経過による加重平均(重み付け)の変化

スピンアップの弱点を持つ「数値予報」と、発達・衰退を表現できない「補外予測」の欠点を互いに補い合うため、時間経過とともに加重平均の割合(ブレンド比率)をシフトさせています。

  • 開始 〜 3時間先: 「補外予測」を圧倒的に重視。(スピンアップ中の数値予報の比重は極めて小さい)
  • 3時間 〜 6時間先: 補外予測の比重を徐々に減らし、立ち上がってきた「数値予報」の比重を連続的に増やしていく。
  • 7時間 〜 15時間先: 今ある雨雲は既に寿命を迎えており、新しい雨雲ができているはずなので、補外予測は使わず「数値予報(MSM/LFM)」の結果を全面的に採用する。

3. 【参考】初期値となる「解析雨量」とは?

降水短時間予報の計算のスタート地点(T=0)には、「解析雨量」というデータが使われます。
気象レーダーは「面的な分布」を捉えるのが得意ですが、雨量の絶対値には誤差があります。一方、アメダスなどの雨量計は「正確な雨量」を測れますが、点の観測です。
この両者の長所を組み合わせ、「レーダーによる1kmメッシュの細かい分布」を「雨量計の正確な値」で補正して作った、極めて精度の高い実況データが「解析雨量」です。これが補外予測の精度の高さを支えています。


4. まとめ:学科試験対策チェックリスト

  • 予測対象のひっかけ: 降水短時間予報の対象は、瞬間の「降水強度」ではなく「1時間降水量」である。
  • 仕様の変化点(超重要): 6時間先を境目にして、更新頻度(10分 $\rightarrow$ 1時間)と、メッシュ解像度(1km $\rightarrow$ 5km)が切り替わる。
  • 補外予測の限界: 補外予測は現在の雨雲を流すだけなので、「新しい雨雲の発生」や「山岳地帯での地形性降雨の強化」を予測することはできない。
  • 重み付けの変化: 予測の前半は実況に基づく「補外予測」を重視し、後半になるにつれて物理方程式に基づく「数値予報(MSM/LFM)」の割合を大きくしていく(加重平均)。
  • 初期値の整合性: 予測のスタート地点には、レーダーと雨量計の観測データを統合して作成された「解析雨量」が用いられている。