4-2 大気の放射

気象現象の根本的なエネルギー源は太陽です。
この単元「大気の放射」は、学科試験(一般知識)の最頻出分野の一つであり、実技試験の基礎ともなる非常に重要なパートです。計算問題としても出題されやすいため、法則の名前と公式、そして定性的な意味(「温度が上がるとどうなるか?」など)をしっかり押さえましょう。


1. 地球の公転と南中高度

地球は太陽の周りを1年かけて公転しています。この時、地軸(自転軸)が公転面の垂直方向に対して23.4度傾いていることが、季節変化を生み出します。

引用元:国立天文台HP

南中高度の計算式

ある地点(緯度 $\phi$)における、太陽が真南に来た時の高度(南中高度 $h$)は以下の式で表されます。

$$h = 90^\circ – \phi + \delta$$
  • $\phi$ (ファイ):観測地点の緯度
  • $\delta$ (デルタ):太陽の赤緯(太陽が真上に来る緯度)

💡 試験対策のポイント

赤緯 $\delta$ の値は季節によって決まっています。暗記必須です。

  • 夏至のとき:$\delta = +23.4^\circ$
  • 冬至のとき:$\delta = -23.4^\circ$
  • 春分・秋分のとき:$\delta = 0^\circ$

例:北緯35度の地点の夏至の南中高度は、$90 – 35 + 23.4 = 78.4^\circ$ となります。


2. 太陽定数

太陽定数とは、地球の大気上端において、太陽光線に垂直な面が受ける単位面積・単位時間あたりのエネルギー量のことです。

  • 値: 約 $1.37 \, \text{kW/m}^2$ ($1366 \, \text{W/m}^2$)

「定数」と呼ばれますが、実際には地球と太陽の距離の変化(近日点・遠日点)や、太陽活動(黒点数など)によってわずかに変動します。


3. 太陽高度と放射強度の変化

地表面が受け取るエネルギー量は、太陽高度(地面に対する太陽の角度)によって大きく変化します。

入射角度による変化

太陽高度を $h$、太陽光線に垂直な面の強度を $I_0$ とすると、水平面が受ける放射強度 $I$ は以下のようになります。

$$I = I_0 \sin h$$
  • 高度が高い(昼間・夏): $\sin h$ が大きくなり、エネルギーが狭い範囲に集中するため、強度が大きくなる。
  • 高度が低い(朝夕・冬): $\sin h$ が小さくなり、エネルギーが広い範囲に分散するため、強度が小さくなる。

また、高度が低いと大気中を通過する距離(光学的厚さ)が長くなるため、散乱や吸収を受けやすく、地上に届くエネルギーはさらに減少します。


4. アルベド(反射率)

アルベドとは、入射した放射エネルギーに対する、反射されたエネルギーの比率のことです。

$$\text{アルベド} = \frac{\text{反射される放射量}}{\text{入射する放射量}}$$
  • 地球全体の平均アルベド: 約 0.3(30%)
    ※太陽からのエネルギーの3割は宇宙へそのまま反射され、残り7割が地球(大気と地表)に吸収されます。
  • 物質による違い:
    • 新雪:0.8 ~ 0.9(非常に高い)
    • 雲:0.3 ~ 0.8(厚さによる)
    • 海面・森林:0.1 以下(低い=よく吸収する)

5. ステファン・ボルツマンの法則

あらゆる物体は、その温度に応じたエネルギーを放射しています(黒体放射)。
「物体の温度が高いほど、放出される全エネルギー量は急激に増える」という法則です。

公式

単位面積、単位時間あたりに黒体から放出される全エネルギー $I$ は、絶対温度 $T$ の4乗に比例します。

$$I = \sigma T^4$$

$\sigma$(シグマ):ステファン・ボルツマン定数
$\sigma = 5.67 \times 10^{-8} \, \text{W}/(\text{m}^2 \cdot \text{K}^4)$

💡 試験対策のポイント

「温度が2倍になると、放射エネルギーは何倍になるか?」という問題が頻出です。
$2^4 = 16$ なので、答えは16倍になります。


6. プランクの法則

ステファン・ボルツマンの法則が「全エネルギー量」を示すのに対し、プランクの法則は「どの波長にどれくらいの強さのエネルギーがあるか(スペクトル分布)」を示します。

  • 温度が高い物体ほど、あらゆる波長で放射強度が強くなります(グラフ全体が上に持ち上がる)。
  • 温度によって、放射のピークとなる波長が異なります(後述のウィーンの変位則)。

7. ウィーンの変位則

プランクの法則のグラフにおいて、放射強度が最大となる波長(ピーク波長)は、温度に反比例するという法則です。

公式

ピーク波長 $\lambda_{max}$ と絶対温度 $T$ の関係:

$$\lambda_{max} = \frac{2897}{T} \approx \frac{3000}{T} \, [\mu\text{m} \cdot \text{K}]$$

この法則により、太陽放射と地球放射の違いが説明できます。

  表面温度 ($T$) ピーク波長 ($\lambda_{max}$) 放射の種類
太陽 約 $6000 \, \text{K}$ 約 $0.5 \, \mu\text{m}$ 短波放射
(可視光線が中心)
地球 約 $300 \, \text{K}$ 約 $10 \, \mu\text{m}$ 長波放射
(赤外線が中心)

8. キルヒホッフの法則

ある波長において、物体が放射を吸収する能力と、放出する能力の関係を示した法則です。
「ある波長の放射をよく吸収する物体は、その波長の放射をよく放出する」(良き吸収体は、良き放射体である)と言い換えられます。

$$\epsilon_\lambda = \alpha_\lambda$$
  • $\epsilon_\lambda$:その波長における射出率(出しやすさ)
  • $\alpha_\lambda$:その波長における吸収率(吸いやすさ)

🌍 気象学での重要性

大気中の温室効果ガス(水蒸気や二酸化炭素など)は、「可視光線(太陽放射)は通すが、赤外線(地球放射)はよく吸収し、よく放出する」という選択的な性質を持っています。これが温室効果のメカニズム理解に繋がります。