空に浮かぶ雲は、小さな水滴や氷の粒(雲粒)の集まりです。しかし、雲粒があるだけでは雨は降りません。雲粒が地上に落ちてこられるほどの大きさ(雨粒)に成長して初めて「降水」となります。
1. 雲粒と雨粒の違い
まずは、雲の粒と雨の粒の大きさを比較してみましょう。
- 雲粒:
- 半径:約 0.01mm (10μm)
- 特徴:非常に小さく軽いため、わずかな上昇気流でも浮遊し続け、なかなか落ちてきません。
- 雨粒:
- 半径:約 1.0mm (1000μm) 〜
- 特徴:雲粒の100倍の半径を持ちます。
- 体積比: 半径が100倍なので、体積(重さ)は $100^3$ で 100万倍 になります。
ポイント:
降水が起こるためには、微細な雲粒を 100万個 集めて、1つの雨粒に合体させる必要があります。この巨大化のプロセスが「拡散過程」と「併合過程」です。
2. 雲の発生:凝結核とエーロゾル
そもそも、水蒸気から最初の「雲粒」ができるときにも、物理的な壁があります。
2.1 水蒸気の過飽和と凝結
通常、相対湿度が100%(飽和)を超えると、水蒸気は水(液滴)に変わろうとします(凝結)。
しかし、純粋な水蒸気だけで水滴を作ろうとすると、表面張力の影響により、理論上は100%以上の湿度(極端な過飽和)が必要になります。
現実の大気中では、そこまでの過飽和にはなりません。
2.2 エーロゾルと凝結核
現実の大気で、湿度100%付近でスムーズに雲ができるのは、大気中に漂う微粒子(エーロゾル)のおかげです。
- 凝結核: エーロゾルの中でも、特に水を吸い寄せやすい(吸湿性のある)粒子。
- 例: 海塩粒子(海の波しぶき)、硫酸塩粒子など。
- 役割:
- 凝結核が水に溶けることで、「水蒸気を引き寄せる力」が強まり、低い湿度でも水滴が安定して存在できるようになります。
- これにより、わずかな過飽和で雲粒が誕生します。
3. 雲粒の成長①:拡散過程(氷晶過程)
主に中緯度以北や高い空で起こる、「冷たい雨」(0℃以下の層を通る雨)の成長プロセスです。ここでは「氷と水の飽和水蒸気圧の差」が原動力になります。
メカニズム
0℃以下の雲の中では、凍っていない水(過冷却水滴)と、氷の粒(氷晶)が共存していることがあります。
- 性質の違い: 同じ温度でも、氷の表面よりも水の表面の方が、水分子が飛び出しやすい(蒸発しやすい)性質があります。
- つまり、「水に対する飽和水蒸気圧 > 氷に対する飽和水蒸気圧」 となります。
- 水蒸気の移動(拡散):
- 過冷却水滴にとっては「乾燥している」状態になり、どんどん蒸発します。
- その水蒸気が、氷晶にとっては「湿りすぎている(過飽和)」状態となり、氷晶の表面に昇華してくっつきます。
- 結果:
- 水滴が小さくなり、氷晶が急速に大きく成長します。
4. 雲粒の成長②:併合過程
主に熱帯地方の「暖かい雨」(一度も凍らない雨)や、拡散過程で成長した後の雪片が雨になるときのプロセスです。
メカニズム
粒の大きさによる落下速度の違いを利用した、物理的な衝突・合体です。
- 衝突: 大きな水滴は落下速度が速く、小さな水滴は遅いです。そのため、大きな水滴が落下しながら、下にある小さな水滴に追いつき、衝突します。
- 併合: 衝突した際に、合体してさらに大きな水滴になります。
- 連鎖: 大きくなるとさらに落下速度が増し、より多くの水滴を巻き込んで雪だるま式に急成長します。
5. 最終落下速度(終端速度)
雨粒が地上に落ちてくるときの速度は、粒の大きさによって決まります。
重力による加速と、空気抵抗による減速が釣り合ったときの速度を最終落下速度(終端速度)と呼びます。
- 限界: 雨粒は大きくなりすぎると(半径3mm程度〜)、空気抵抗を受けて形が扁平になり、最終的には分裂してしまいます。そのため、ある程度(半径7mm程度)以上の大きさの雨粒は存在しません。
