2-1 水の状態変化と潜熱

地球上の水は、気象条件によって「気体(水蒸気)」「液体(水)」「固体(氷)」の3つの姿(相)を自由に行き来します。この変化に伴って、周囲と熱エネルギーのやり取りが行われます。

1. 状態変化の名称

まずは、それぞれの変化の呼び方を整理しましょう。特に「昇華」と「凝結」は試験によく出ます。

変化の方向名称
液体 $\rightarrow$ 気体蒸発
気体 $\rightarrow$ 液体凝結
液体 $\rightarrow$ 固体凝固
固体 $\rightarrow$ 液体融解
固体 $\leftrightarrow$ 気体昇華

2. 顕熱と潜熱

物質に熱を加えたとき、そのエネルギーの使われ方には2種類あります。

① 顕熱(けんねつ)

  • 定義: 物質の状態を変えずに、温度を変えるために使われる熱。
  • 特徴: 温度計で測ることができる(=顕在化している)熱です。
    • 例: 水をお湯にする、空気を暖める。

② 潜熱(せんねつ)

  • 定義: 物質の温度を変えずに、状態を変えるためだけに使われる熱。
  • 特徴: 温度計には現れない(=潜んでいる)熱です。
    • 例: $0^\circ\text{C}$の氷が、$0^\circ\text{C}$の水になるときに必要な熱。

気象学での重要性:

大気中では、水蒸気が雲(水滴)になるときに潜熱が放出され、それが空気を暖める顕熱に変わります。これが台風や低気圧のエネルギー源となります。


3. 熱の「吸収」と「放出」

試験で最も問われるのが、その変化が起きるとき、周囲の熱を奪う(冷やす)のか、放出する(温める)のか」です。

吸熱反応(熱を奪う) $\rightarrow$ 周囲は冷える

水が、よりエネルギーの高い状態(氷$\rightarrow$水$\rightarrow$水蒸気)になるとき、周囲からエネルギー(熱)を奪います。

  • 蒸発熱(気化熱):
    • 水が蒸発するとき、周りの熱を奪います。
    • 例: 打ち水をすると涼しくなる、汗をかくと体が冷える。
  • 融解熱:
    • 氷が溶けるとき、周りの熱を奪います。
    • 例: 氷枕で熱を下げる。

放熱反応(熱を出す) $\rightarrow$ 周囲は温まる

水が、よりエネルギーの低い状態(水蒸気$\rightarrow$水$\rightarrow$氷)に戻るとき、余ったエネルギーを熱として放出します。ここが気象学の最重要ポイントです。

  • 凝結熱:
    • 水蒸気が水(雲粒)になるとき、大量の熱を放出します。
    • 影響: この熱が周囲の空気を温めるため、上昇気流が維持され、台風や積乱雲が発達します。
  • 凝固熱:
    • 水が氷になるとき、熱を放出します。
    • 影響: 散水氷結法(果樹園で水を撒いて凍らせ、その熱で作物を霜害から守る方法)に応用されています。

4. 潜熱の大きさ(数字のイメージ)

水の状態変化に必要なエネルギーは、他の物質に比べて非常に大きいのが特徴です。

  • 蒸発熱(凝結熱): 約 $2.5 \times 10^6 \text{J/kg}$
  • 融解熱(凝固熱): 約 $0.33 \times 10^6 \text{J/kg}$

ポイント:

「蒸発・凝結」に関わる熱は、「融解・凝固」に関わる熱の約7〜8倍も大きいです。

つまり、氷が溶けることよりも、水が蒸発したり雲になったりする方が、大気のエネルギー収支に与える影響は圧倒的に大きいのです。


まとめ:試験対策チェックリスト

気象予報士試験では、以下の因果関係を即座に思い出せるようにしましょう。

  • 蒸発(液$\rightarrow$気) = 熱を吸収する = 周囲が冷える(打ち水効果)
  • 凝結(気$\rightarrow$液) = 熱を放出する = 周囲が温まる(台風のエネルギー)
  • 潜熱の主役は「水蒸気」の出入りである(融解熱より蒸発熱の方がはるかに大きいため)。