中層大気とは、対流圏界面(高度約10〜16km)から中間圏界面(高度約80km)までの領域、すなわち成層圏と中間圏を合わせた領域を指します。
1. 中層大気の気温の特徴
中層大気の気温分布は、太陽放射による加熱・冷却(放射過程)と、空気の運動による加熱・冷却(力学過程)のバランスによって決まります。

成層圏(高度約10km〜50km)
成層圏では、オゾンが太陽からの紫外線を吸収して加熱するため、高度とともに気温が上昇します。
- 夏半球(極付近): 最も高温になります。白夜により一日中太陽光(紫外線)が当たり続けるため、オゾンによる加熱が最大となります。
- 冬半球(極付近): 最も低温になります。極夜により太陽光が全く当たらないため、放射冷却によって冷やされ続けます。
- 緯度分布の特徴: 夏極(高温)から冬極(低温)に向かって、気温が単調に低下する分布となります。
中間圏(高度約50km〜80km)
中間圏ではオゾンが少なくなるため、高度とともに気温が低下します。しかし、極域の気温分布は成層圏とは逆転し、直感に反する特徴を示します。
- 夏半球(極付近): 地球上で最も低温(約-90℃以下)になります。
- 理由: 下層から伝播してきた重力波が砕波し、上昇気流(断熱冷却)を強制的に引き起こすためです(力学的冷却)。
- 冬半球(極付近): 夏極に比べて相対的に高温になります。
- 理由: 上空から下降気流(断熱昇温)が発生するためです(力学的加熱)。
2. 中層大気の風の特徴
中層大気の風(主に東西風)は、「温度風の関係(温度勾配と風のシアーの関係)」によって、気温分布と密接に対応しています。

成層圏〜中間圏下部
気温分布(夏極が高温、冬極が低温)に対応して、以下のような大規模な風系が形成されます。
- 夏半球: 東風(偏東風)が卓越します。
- 極が高温・低緯度が低温となるため、温度風の関係により、高度とともに東風成分が強まります。
- 冬半球: 西風(偏西風)が卓越します。
- 極が低温・低緯度が高温となるため、高度とともに西風成分が強まります。これを「極夜ジェット」と呼びます。成層圏界面付近で最大風速(50〜80m/s程度)に達します。
中間圏上部
中間圏の気温分布が逆転(夏極が低温、冬極が高温)することに伴い、風の構造も変化します。
- 温度風の関係により、これまで強まっていた風(夏の東風、冬の西風)に対し、逆向きの風速成分(シアー)が働きます。
- その結果、中間圏の上部ではジェット気流が弱まり、風向が逆転する傾向が見られます。
3. プラネタリー波の鉛直伝搬
対流圏(ヒマラヤ山脈などの大規模地形や大陸・海洋の熱的コントラスト)で発生した大規模なロスビー波(プラネタリー波)は、中層大気へ向かって上向きに伝搬することがあります。
伝搬の条件
プラネタリー波が鉛直方向に伝搬できるかどうかは、中層大気の「背景の風」によって決まります。
- 冬半球(西風のとき):
- 伝搬可能です。ただし、風が強すぎると伝搬できません。冬の成層圏には対流圏からプラネタリー波がどんどん入ってくるため、大気が大きく乱れます。
- これが極端に強まると、「成層圏突然昇温(SSW)」が発生し、極夜ジェットが崩壊することがあります。
- 夏半球(東風のとき):
- 伝搬不可能です。プラネタリー波は東風の中を伝わることができません。
- そのため、夏の成層圏は冬に比べて波による擾乱が少なく、等圧線が同心円状の穏やかな状態が保たれます。
4. 準2年周期運動 (QBO)
赤道域の下部成層圏(高度20〜30km付近)で見られる、非常に規則的な風の変動現象です。
- 現象: 東西風の風向が、約26〜28ヶ月(約2年強)の周期で、西風と東風に交互に入れ替わります。
- 特徴:
- 新しい風の層は上空(約30km以上)から現れ、時間をかけてゆっくりと下層(対流圏界面付近)へ降りてきます。
- これをQBO (Quasi-Biennial Oscillation) と呼びます。
- メカニズム:
- 赤道域の対流活動によって発生した「ケルビン波」(西風の角運動量を運ぶ)と「ロスビー重力波」(東風の角運動量を運ぶ)が、上空へ伝搬して砕けることで、交互に西風と東風を加速させることで生じます(波と平均流の相互作用)。
