10-1 中層大気の構造と力学:QBOやプラネタリー波とは?【気象予報士試験対策】

地球の大気は高度によっていくつかの層に分かれています。その中でも、気象予報士試験や大学の気象学で重要となるのが中層大気です。

中層大気では、私たちが普段生活している対流圏とは異なるメカニズムで気温や風が決まっています。また、成層圏突然昇温(SSW)や準2年周期振動(QBO)など、地球規模の大気循環に関わる重要な現象も発生します。

この記事では、中層大気の構造や気温分布、風系、プラネタリー波、QBOについて詳しく解説します。


1. 中層大気とは

中層大気とは、

  • 対流圏界面(約10〜16km)
  • 中間圏界面(約80〜90km)

の間に存在する大気層を指します。

主に次の2つの層から構成されています。

大気層高度
成層圏約10〜50km
中間圏約50〜80km

対流圏では雲や降水などの気象現象が発生しますが、中層大気では放射過程や大規模な大気循環が重要になります。


2. 中層大気の気温の特徴

引用元:第61回気象予報士試験一般知識

中層大気の気温は、

  • 太陽放射による加熱・冷却
  • 大気循環による断熱加熱・断熱冷却

によって決まります。

2-1 成層圏の気温分布

成層圏最大の特徴は、

高度が高くなるほど気温が上昇する

ことです。

これは対流圏とは逆の性質です。

なぜ気温が上昇するのか?

成層圏にはオゾン層があります。オゾンは太陽から届く紫外線を吸収し、そのエネルギーを熱として放出します。そのため、

  • 高度が高いほど紫外線吸収が大きい
  • 気温が上昇する

という構造になります。


季節による違い

夏極域

最も高温

理由は白夜によって長時間太陽光が照射されるためです。

オゾンによる加熱が最大になります。

冬極域

最も低温

極夜によって太陽放射がほとんど届かず、放射冷却が続くためです。


2-2 中間圏の気温分布

中間圏では再び気温が低下します。

そのため中間圏界面付近は地球大気で最も低温な領域になります。

なぜ高度が高くなると中間圏は冷えるのか?

高度が高くなるにつれてオゾン量が減少し、紫外線による加熱効果が弱くなるためです。

季節による違い

成層圏とは反対に、

夏極域:最も低温

冬極域:最も高温

となります。


3. 中層大気の風の特徴

中層大気では、温度風の関係によって東西風が決まります。

温度風の関係とは、「南北方向の温度差が大きいほど上空の風が強くなる」という法則です。

引用元:第53回気象予報士試験一般知識

3-1 冬半球の風

冬極は低温です。

そのため大きな温度勾配が形成されます。

結果として、

強い偏西風(西風)

が発達します。

極夜ジェット

冬の成層圏では、極域を取り囲む非常に強い西風帯が形成されます。

これを極夜ジェット(Polar Night Jet)と呼びます。

風速は50〜80m/s以上になることがあります。

3-2 夏半球の風

夏極は高温です。温度風の関係から、偏東風(東風)が卓越します。

なぜ中間圏上部で風向が逆転するのか?

中間圏では気温分布が逆転するため、温度風の関係も逆転します。その結果、

  • 冬の西風ジェットは弱まる
  • 夏の東風ジェットも弱まる

という特徴が現れます。


4. プラネタリー波とは

プラネタリー波(ロスビー波)は、地球規模で発生する大気波動です。主な発生源は、

  • ヒマラヤ山脈
  • ロッキー山脈
  • 大陸と海洋の温度差

などです。

対流圏で発生した波は、条件が整うと成層圏へ上向きに伝搬します。これによって中層大気の循環が大きく変化します。

4-1 冬半球では伝搬できる

冬の成層圏は偏西風です。この環境ではプラネタリー波が上空へ伝わることができます。

そのため、

  • 極夜ジェットが乱される
  • 極渦が変形する

といった現象が発生します。

4-2成層圏突然昇温(SSW)

プラネタリー波が非常に強くなると、極域成層圏の気温が数日で数十℃上昇することがあります。

これが成層圏突然昇温(Sudden Stratospheric Warming)

です。発生すると極夜ジェットが崩壊し、日本の寒波にも影響を与える場合があります。

4-3 夏半球では伝搬できない

夏成層圏は東風です。プラネタリー波は東風中では上向きに伝搬できません。

そのため、

  • 波による擾乱が少ない
  • 大気循環が安定する

という特徴があります。


5. 準2年周期振動(QBO)とは

QBO(Quasi-Biennial Oscillation)は、

赤道成層圏で発生する東西風の周期的変動です。

特徴

  • 発生高度:約20〜30km
  • 周期:約26〜28か月
  • 東風と西風が交互に現れる
  • 上空から下層へゆっくり下降する

QBOが発生する仕組み

赤道域の活発な対流活動によって、

  • ケルビン波
  • ロスビー重力波

が発生します。これらの波が上空で砕波すると、運動量が大気に与えられます。その結果、

  • 西風
  • 東風

が交互に形成されるのです。


6. まとめと気象予報士試験で頻出のポイント

試験対策としては次の内容を確実に覚えましょう。

・成層圏は高度とともに昇温する

・成層圏は夏極が高温・冬極が低温

・中間圏は夏極が低温・冬極が高温

・冬成層圏は強い偏西風(極夜ジェット)

・プラネタリー波は冬の成層圏へ伝搬する

・強い波活動は成層圏突然昇温を引き起こす

・QBOは約28か月周期で東風と西風が交代する

中層大気は成層圏と中間圏から構成され、対流圏とは異なる物理過程によって支配されています。成層圏ではオゾンによる加熱が重要であり、中間圏では大気循環による断熱加熱・冷却が気温分布を決定します。

また、プラネタリー波やQBOは地球規模の大気循環を理解するうえで欠かせない現象であり、気象予報士試験でも毎年のように出題される重要テーマです。