8-1 大気の大規模循環

地球の大気は、赤道で温められた空気を極へ、極で冷やされた空気を赤道へ運ぼうと動いています。
しかし、地球は自転しているため、ひとつの大きな循環にはならず、緯度ごとに3つの循環(セル)に分かれています。

北半球を例に、赤道(0度)から北極(90度)までの断面図と、地上の風系を見ていきましょう。


全体像:3つの循環と地上の風

まずは、地球全体でどのような循環が起きているのか、模式図でイメージをつかみましょう。

緯度による循環の区分(北半球)

緯度帯循環の名前性質地上の風気圧帯
高緯度 (60°~90°)極循環直接循環極偏東風極高圧帯
中緯度 (30°~60°)フェレル循環間接循環偏西風寒帯前線帯
低緯度 (0°~30°)ハドレー循環直接循環貿易風亜熱帯高圧帯

1. ハドレー循環

場所: 赤道 〜 緯度30度付近

太陽の熱を最も受ける赤道付近で発生する、最も背が高く強力な循環です。

  • 上昇: 赤道付近で温められた空気が上昇し、積乱雲を作ります(熱帯収束帯)。
  • 移動: 上空で高緯度側(北)へ向かいます。
  • 下降: 地球の自転の影響や冷却により、緯度30度付近で重くなって下降します。
  • 還流: 地上付近では、赤道へ戻る風が吹きます。
  • 特徴: 暖かい空気が上昇し、冷えた空気が下降する「熱的直接循環」です。

2. 亜熱帯高圧帯

場所: 緯度30度付近

ハドレー循環とフェレル循環の下降気流が重なる場所です。

  • 特徴: 上空から乾燥した空気が降りてくるため、雲ができにくく、晴天が続きます
  • 影響: 世界の多くの砂漠(サハラ砂漠など)は、この緯度帯に分布しています。日本の夏の太平洋高気圧もこの一部です。
  • 別名: 中緯度高圧帯とも呼ばれます。

3. フェレル循環

場所: 緯度30度 〜 60度付近

ハドレー循環と極循環に挟まれた、中緯度帯(日本も含む)の循環です。

  • メカニズム:
    • 南側のハドレー循環(沈降)と、北側の極循環(上昇)という2つの強い歯車に挟まれて、無理やり逆回転させられている歯車のような存在です。
  • 特徴:
    • 冷たい空気が上昇し、暖かい空気が下降する形になるため、エネルギー効率の悪い「熱的間接循環」と呼ばれます。
    • この領域では、南北の温度差が大きいため、偏西風が蛇行し、温帯低気圧や移動性高気圧が発達して熱を混ぜ合わせます。

4. 中緯度偏西風帯

場所: 緯度30度 〜 60度付近の地上〜上空

フェレル循環のエリア(地上)や、ハドレー循環の上空などで吹く西寄りの風です。

  • 成因:
    • 高緯度(低温)と低緯度(高温)の温度差(気圧差)によって、極に向かう力が働きます。
    • これにコリオリ力(進行方向の右へ曲げる力)が働き、西から東へ向かう強い風(偏西風)となります。
  • ジェット気流: 特に圏界面付近(高さ10km前後)では風速が最強となり、「ジェット気流」と呼ばれます。

5. 極循環

場所: 緯度60度 〜 90度(極)

北極や南極の寒気によって作られる循環です。

  • 下降: 極では空気が強力に冷やされるため、重くなって下降します(極高圧帯)。
  • 移動: 地上付近を低緯度側(南)へ流れ出します。
  • 上昇: 緯度60度付近で、中緯度からの暖気とぶつかり(寒帯前線)、上昇します。
  • 特徴: ハドレー循環と同じく、冷たい空気が下降する「熱的直接循環」です。

6. 偏東風帯

場所: 緯度60度以北の地上

極循環の地上部分で吹く風です(極偏東風とも呼びます)。