5-1 気体分子の挙動

高気圧や低気圧、雲の発生などの現象を理解するには、まず空気を構成する分子たちが、温度や圧力の変化に対してどのように振る舞うかを知る必要があります。


1. 大気の分子組成

地球の大気(乾燥空気)は、いくつかの気体が混ざり合った混合気体です。その割合は高度約 80km まではほぼ一定です。上位4つの成分と比率は必ず暗記しましょう。

順位気体化学式体積比(%)
1窒素$N_2$78.1
2酸素$O_2$20.9
3アルゴン$Ar$0.9
4二酸化炭素$CO_2$0.04

💡 試験対策のポイント

  • 窒素と酸素だけで全体の 99% を占めます。
  • 第3位は「二酸化炭素」ではなく**「アルゴン」**であることに注意!(ひっかけ問題でよく出ます)
  • 乾燥空気の平均分子量 $28.96$(約29) という数字も、計算問題で頻出の定数です。

2. モルとアボガドロ数

気体分子は目に見えないほど小さく、膨大な数になります。そこで、鉛筆を「1ダース(12本)」と数えるように、原子や分子をまとめて数える単位として**「モル ($mol$)」**を使います。

アボガドロ数

すべての気体は、種類に関係なく、$1 \, mol$ の中に $6.02 \times 10^{23}$ 個の分子を含んでいます。この数をアボガドロ数と呼びます。

標準状態での体積

$0^\circ C$、$1$ 気圧($1013 \, hPa$)の標準状態において、$1 \, mol$ の気体の体積は、種類に関わらず $22.4 \, L$ になります。

  • 酸素 $1 \, mol$ も、窒素 $1 \, mol$ も、同じ温度・圧力なら同じ体積を占める。
  • つまり、「空気の重さ(密度)」の違いは、「分子そのものの重さ(分子量)」の違いによって決まります。

3. ボイルの法則(温度一定)

ここからは、気体の「圧力 ($P$)」「体積 ($V$)」「温度 ($T$)」の関係を見ていきましょう。

「温度が一定のとき、気体の体積は圧力に反比例する」

$$PV = \text{一定}$$

(または $P_1 V_1 = P_2 V_2$)

  • イメージ: 注射器の出口を指で塞いでピストンを押し込む(圧力をかける)と、中の空気の体積は縮みます。逆に、圧力を弱めれば体積は膨らみます。

4. シャルルの法則(圧力一定)

「圧力が一定のとき、気体の体積は絶対温度に比例する」

$$V = \text{一定} \times T$$

(または $\frac{V_1}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}$)

  • イメージ: へこんだピンポン玉をお湯につけると、中の空気が温まって膨張し、元に戻ります。
  • 重要: 温度 $T$ には、摂氏($^\circ C$)ではなく、**絶対温度 ケルビン($K$)**を使わなければなりません。
    • $T \, (K) = t \, (^\circ C) + 273$

5. ボイル・シャルルの法則

ボイルの法則とシャルルの法則を合体させたものです。

「気体の体積は、圧力に反比例し、絶対温度に比例する」

$$\frac{PV}{T} = \text{一定}$$

(または $\frac{P_1 V_1}{T_1} = \frac{P_2 V_2}{T_2}$)

この法則を使えば、例えば「上空に行って気圧が下がり(ボイル)、気温も下がった(シャルル)とき、空気塊の体積はどうなるか?」といった計算が可能になります。


6. 理想気体の状態方程式

ボイル・シャルルの法則の「一定」の部分を、気体の物質量 $n \, (mol)$ と、気体定数 $R$ を使って表したのが、気象学で最も重要な式です。

$$PV = nRT$$

  • $P$:圧力 ($Pa$)
  • $V$:体積 ($m^3$)
  • $n$:物質量 ($mol$)
  • $R$:普遍気体定数 ($8.31 \, J \cdot K^{-1} \cdot mol^{-1}$)
  • $T$:絶対温度 ($K$)

気象学での使い分け

気象予報士試験では、この式の変形版である**「単位質量あたりの状態方程式」**も頻出です。

密度 $\rho = \frac{M}{V}$ (質量 $M$ を体積 $V$ で割ったもの)を用いると、以下のようになります。

$$P = \rho R_d T$$

  • $\rho$(ロー):空気の密度
  • $R_d$:乾燥空気の気体定数($287 \, J \cdot K^{-1} \cdot kg^{-1}$)

📝 計算のヒント

「暖かい空気は軽い(密度が小さい)」という現象は、この式を変形した $\rho = \frac{P}{R_d T}$ から説明できます。分母の温度 $T$ が大きくなると、密度 $\rho$ は小さくなりますね。これが熱気球が飛ぶ原理であり、大気の対流の原動力です。