空気中に含まれる水蒸気の量を表す方法は、目的に応じて使い分けられます。
1. 水蒸気圧 ($e$)
空気が壁を押す力(気圧)のうち、水蒸気の分だけを取り出したものです。
- 定義: 大気圧(全圧)のうち、水蒸気が占める分圧(単位: $\text{hPa}$)。
- 特徴:
- ドルトンの法則により、全圧 $P$ は「乾燥空気の分圧」と「水蒸気圧 $e$」の足し算になります。
- 飽和水蒸気圧 ($e_s$): その温度で空気が含むことのできる限界の水蒸気圧。気温が高いほど大きくなります。
2. 水蒸気密度 ($a$) または 絶対湿度
一定の体積の中に、何グラムの水蒸気が入っているかを表します。
- 定義: 単位体積 ($1\text{m}^3$) あたりの水蒸気の質量 ($g$)。
- 単位: $\text{g/m}^3$
- 式: 状態方程式 $e = a R_v T$ より導かれます。
- 試験のポイント(欠点):
- 空気塊が上昇して膨張(体積が増加)すると、中の水蒸気量が同じでも、分母の体積が増えるため値は小さくなってしまいます。
- そのため、気象学ではあまり使い勝手が良くなく、次の「混合比」や「比湿」が好まれます。
3. 混合比 ($r$) と 比湿 ($q$)
この2つは非常に似ていますが、分母が違います。どちらも「空気塊が上昇・下降しても(凝結しない限り)値が変わらない」という保存量であることが最大のメリットです。
① 混合比 ($r$)
- 定義: 乾燥空気 $1\text{kg}$ に対して、何 $kg$(または $g$)の水蒸気が含まれているか。
- 式: $$r = \frac{\text{水蒸気の質量}}{\text{乾燥空気の質量}}$$
- 特徴:
- エマグラムにある「等混合比線」として使われます。
- 空気が膨張・圧縮しても、質量の比率は変わらないため、保存されます。
② 比湿 ($q$)
- 定義: 湿潤空気(水蒸気を含む空気全体) $1\text{kg}$ に対して、何 $kg$(または $g$)の水蒸気が含まれているか。
- 式: $$q = \frac{\text{水蒸気の質量}}{\text{湿潤空気の質量(乾燥空気+水蒸気)}}$$
- 特徴:
- 力学の計算(運動方程式など)では、空気全体の質量を扱うため、こちらが使われます。
試験のテクニック:
大気中の水蒸気量は乾燥空気に比べてごくわずか(数%以下)です。
そのため、計算問題では 「混合比 $r$ $\fallingdotseq$ 比湿 $q$」 (値はほぼ同じ)とみなして解くことが多いです。
4. 露点温度 ($T_d$)
- 定義: 空気の気圧を変えずに冷やしていったとき、水蒸気が飽和して凝結し始める(露ができる)温度。
- 特徴:
- 空気に含まれる水蒸気の量(混合比)だけで決まります。
- 水蒸気が多いほど露点温度は高く、少ないほど低くなります。
- 気温 $T$ と露点温度 $T_d$ が同じ ($T = T_d$) になると、相対湿度は $100\%$ です。
5. 湿数 ($T – T_d$)
高層天気図の解析で「湿り具合」を判断する最も実用的な指標です。
- 定義: 気温 ($T$) から 露点温度 ($T_d$) を引いた値。
- 別名:露点差(Dew Point Depression)
- 特徴:
- 湿数 $\text{0}$: 湿度が $100\%$(飽和している)。
- 湿数が小さい: 空気が湿っている(雲ができやすい)。
- 湿数が大きい: 空気が乾燥している。
試験の必須暗記(湿潤域):
高層天気図(850hPaや700hPa)において、湿数 $3^\circ\text{C}$ 以下の領域を「湿潤域」とみなし、雲が発生している可能性が高いと判断します。
(作図問題でハッチングを書く際の基準になります)
まとめ:比較表
試験直前に確認するためのリストです。
| 指標 | 記号 | 定義のイメージ | 上下運動での保存 | 備考 |
| 水蒸気圧 | $e$ | 水蒸気の圧力 | × 保存しない | 気圧が変わると変化する |
| 水蒸気密度 | $a$ | $1\text{m}^3$中の水蒸気質量 | × 保存しない | 体積が変わると変化する |
| 混合比 | $r$ | 乾燥空気に対する比 | ○ 保存する | エマグラムで使用 |
| 比湿 | $q$ | 全体に対する比 | ○ 保存する | 力学で使用 |
| 露点温度 | $T_d$ | 飽和するまで冷やした温度 | ○ 保存する※ | ※未飽和での断熱変化では、混合比が変わらないため露点も(ほぼ)保存されると考える場合があるが、厳密には気圧変化でわずかに変わる。 |
| 湿数 | $T-T_d$ | 乾燥の度合い | × 保存しない | 3℃以下なら雲あり |
学習のヒント
試験では、「空気塊を断熱的に持ち上げたとき、混合比はどうなるか?(答え:変わらない)」や、「高層天気図で雲のエリアを特定せよ(答え:湿数3℃以下のエリア)」といった形で問われます。
特に「混合比」と「湿数」は完璧に理解しておきましょう。
