地球を包み込む大気。私たちが普段見上げている空は、実ははるか上空100km以上まで広がっています。しかし、そのすべてが同じ性質を持っているわけではありません。
大気は「高度とともに気温がどう変化するか」という基準によって、下から順に対流圏・成層圏・中間圏・熱圏の4つの層に分けられます。
気象予報士試験でも頻出となるこの「大気の鉛直構造」。気温のグラフがなぜ「ジグザグ」になるのか、丸暗記ではなく「理由」をセットで理解することが合格への近道です。それぞれの層の特徴と、気温変化のメカニズムを詳しく見ていきましょう。

1. 対流圏(地表 〜 約10〜15km)
私たちが暮らし、雲ができ、雨が降る。日々の「天気」が存在するのがこの対流圏です。大気全体の質量の約80%、そして水蒸気のほとんどがこの薄い層に集中しています。
- 気温の変化:上に行くほど「下がる」
- 平均して、高度が100m上がるごとに気温は約0.65℃下がります。山登りをすると涼しくなるのはこのためですね。
- なぜ気温が下がるの?(熱源)
- 対流圏の主な熱源は、太陽の光で直接暖められた「地表面」です。ストーブ(地表面)から遠ざかるほど寒くなる、とイメージすると分かりやすいでしょう。
【試験対策ワンポイント!】
対流圏のてっぺん(対流圏界面)の高さは、地球上で一定ではありません。赤道付近では約16kmと高く、極付近では約8kmと低くなります。また、同じ場所でも夏は高く、冬は低くなるという特徴は試験でよく狙われるので要チェックです。
2. 成層圏(対流圏界面 〜 約50km)
対流圏を抜けると、今度は空気が非常に安定した「成層圏」に入ります。雲はほとんど発生せず、旅客機が揺れを避けて飛ぶのもこの層の下部です。
- 気温の変化:上に行くほど「上がる」
- 下部は気温がほぼ一定(等温層)ですが、上に行くにつれて気温が上昇し、成層圏のてっぺん(高度約50km)では0℃近くまで上がります。
- なぜ気温が上がるの?(熱源)
- 高度20〜30km付近にあるオゾン層が、太陽からの紫外線を吸収して熱を発生させているからです。
- 特徴
- 「下が冷たく、上が暖かい」という構造のため、空気が上下に混ざろうとする対流が起きにくく、非常に安定しています(これが「成層」という名前の由来です)。稀に「真珠母雲(極成層圏雲)」が見られることがあります。
3. 中間圏(約50km 〜 約80km)
オゾンの恩恵が届かなくなる中間圏は、地球上で最も過酷な寒さとなる層です。
- 気温の変化:上に行くほど「再び下がる」
- なぜ気温が下がるの?(熱源)
- 成層圏のオゾン層のような熱源がなくなり、さらに下からの熱源からも遠ざかるためです。
- 特徴
- 上端の中間圏界面付近では、気温がマイナス90℃以下にもなります。夏の高緯度地方では、この極寒の層に氷の粒でできた「夜光雲」が発生することがあります。
4. 熱圏(約80km 〜 500km以上)
中間圏を抜けると、いよいよ宇宙空間へと続く熱圏です。ここでは空気が極端に薄くなります。
- 気温の変化:上に行くほど「急激に上がる」
- 上部では1000℃〜2000℃というとんでもない温度に達します。
- なぜ気温が上がるの?(熱源)
- ごくわずかに存在する酸素原子や窒素分子が、太陽からの強力なX線や極端紫外線を直接吸収するためです。
- 特徴
- 電波を反射する「電離層」が存在し、地球上の通信に大きな役割を果たしています。また、美しいオーロラが発生するのもこの熱圏です。
- ※注意点: 温度計(分子の運動エネルギー)としては高温ですが、空気がスカスカなため、私たちが宇宙服を着てそこに行っても「肌が焼けるような暑さ」を感じることはありません。
5. 【まとめ】各層の比較と「圏界面」の重要性
試験直前の振り返り用に、4つの層の特徴を表にまとめました。
| 層の名前 | 高さの目安 | 気温の変化 | 気温変化の主な要因 | 特徴的な現象 |
| 熱圏 | 80km〜 | 上昇 | 太陽X線・紫外線の吸収 | オーロラ、電離層 |
| 中間圏 | 50〜80km | 低下 | 熱源から遠ざかるため | 夜光雲、最低気温 |
| 成層圏 | 15〜50km | 上昇 | オゾンによる紫外線吸収 | オゾン層、非常に安定 |
| 対流圏 | 0〜15km | 低下 | 地表面からの加熱 | 気象現象(雲・雨など) |
【補足:圏界面の折れ曲がりについて】
各層の境界線は「〇〇圏界面」と呼ばれます。特に重要なのが、対流圏と成層圏の境目である「対流圏界面」です。実はこの界面、一枚の皮のようにつながっているわけではなく、中緯度付近で「折れ曲がり(断裂)」があります。ここには強いジェット気流が吹いており、成層圏のオゾンが対流圏へ漏れ出してくることがあるなど、大気のダイナミックな動きを知る上で非常に重要なポイントです。
