第64回実技2 問3(1)

①前線面の高度を求める問題です。

一般的な大気の成層状態は、上層ほど気温が低くなっていますが、前線の構造は下層に寒気、上層に暖気となっており、前線面付近では、逆転層や安定層(気温減率が小さい層)が生じます。

前線面はこの逆転層や安定層の上端(暖気側)と定義できます。

上の図で示した赤線の高度850hPaで、気温のグラフの傾き(気温減率)の変化点が見られます。

これより下層では湿潤断熱線よりも気温減率が小さく(グラフが立っている)、安定層と言えますが、上層は気温減率が大きい(グラフが寝ている)です。

よってこの850hPa付近が、前線に起因する安定層の上端と考えられるため、前線面の高度はこの850hPaとなります。

理由は上述のとおり、気温の安定層の上端であるため。(15字)

となります。

②続いて、前線面より下層の湿数の特徴についてです。

上の図から、今回の湿数の鉛直分布の特徴としては、大きく2つの層にわけられます。

地表から920hPa付近では湿数(気温と露点温度の差)は下層ほど大きく上層ほど小さくなる傾向を示しています。

一方で、920hPa付近から前線面については、露点温度と気温はほぼ一致し、湿数は一様に小さいと言えます。

これらをまとめますと、

湿数は、前線面から920hPaまでは小さく、それより下層は高度が低いほど大きい。(40字)

名瀬付近に停滞前線が東西に横断しています。この停滞前線の構造は、一般的な前線の構造から考えると南側の暖気が北側の寒気に乗り上げるような構造となっているはずです。②より、名瀬の上空に前線面があることから、断面を切ると下の図のようになります。

よって名瀬は地上前線の側にあります。

④前線面を作図する問題です。

21時以降に観測された風向で、東成分を含んでいるところを下記のように塗りつぶしています。

この塗りつぶした東成分の風を含む領域が、前線面の南側(前線面の上層)に含まれないようになめらかに作図すると下記の実線のように作図できます。

⑤前線面は時間とともに地上に近づいています。問題の条件では、1時間前からの変化がつづくとなっているので、④で作図した前線面をそのまま地上まで伸ばします。

すると、前線面は3時30分頃に地上に到達するので、20分刻みで答えると、320分もしくは40分です。

⑥頻出の知識ですが、暖気移流は、上空に向かって風向が時計回りに変化している部分となります。

条件に示された10日21時から11日9時の範囲をで囲んでいます。その中で、上層に向かって風向が時計回りに変化しているのはで囲んでいる部分になります。よって、暖気移流となっているのは、この時間帯であり、10210分から11540分と、11720分から1190分となります。