ウィンドプロファイラは、地上から上空に向けて電波を発射し、風向・風速などを自動的に観測する機器です。気象庁のネットワークは「WINDAS(ウィンダス)」と呼ばれています。
1. 観測の目的
ラジオゾンデが「1日2回」の観測であるのに対し、ウィンドプロファイラの最大の強みは「連続観測(高頻度)」である点です。
- 風の常時監視: 10分ごとのデータを取得できるため、急激な風の変化を捉えることができます。
- メソスケール現象の把握: 積乱雲への暖湿気の流入、前線の通過、台風周辺の風の構造など、時間変化の激しい現象の監視に使われます。
- ナウキャストへの利用: 降水ナウキャストなどの予測精度の向上に寄与しています。
2. 原理
ドップラーレーダーと同様に、電波のドップラー効果を利用しています。
散乱のターゲット
ウィンドプロファイラが使用する周波数(1.3GHz帯)は、以下の2つのターゲットからの散乱を利用します。
- 大気の乱れ(ブラッグ散乱): 空気中の温度や湿度の微細なムラ(屈折率のゆらぎ)に反射します。これにより、晴天時でも風を測ることができます。
- 降水粒子(レイリー散乱): 雨や雪の粒に反射します。
5方向へのビーム発射

上空の風(3次元ベクトル)を決定するために、上空に向けて5方向のビームを切り替えて発射します。
- 鉛直ビーム: 鉛直方向の速度(上昇流・下降流)を測定。
- 傾斜ビーム(北と南): 南北方向の風速成分を計算。
- 傾斜ビーム(東と西): 東西方向の風速成分を計算。
これらを合成して、各高度の水平風(風向・風速)と鉛直風を算出します。
反射を利用するので、ある程度湿潤でないと観測できません。空気が湿っている夏のほうがより高くまで観測可能です。
3. 主なエラー要因
試験では、データが欠測したり、信頼性が落ちたりするケースが問われます。
| エラー要因 | 現象と理由 |
| 強い降水 | 雨が強い場合、電波は大気の動きではなく「雨粒の落下速度」を風速として測定してしまいます。このため、水平風のデータ精度が悪化したり、欠測扱いになったりします。 |
| サイドローブ | 近くの山や建物からの反射(クラッター)が混入し、誤った風速が出ることがあります。 |
| 渡り鳥・昆虫 | 「エンゼルエコー」と呼ばれ、実際の風とは異なる鳥の移動速度を観測してしまうことがあります。 |
4. 前線面の解析
ウィンドプロファイラの時系列図(横軸が時間、縦軸が高度)を使って、前線の通過時刻や構造を解析する問題は非常によく出題されます。
前線通過のサイン
前線とは「暖気と寒気の境目」であり、そこでは風向が急変します。

- 寒冷前線の通過:
- 通過時に風向が時計回りに急変します(例:南西風 $\rightarrow$ 北西風)。
- 図上では、風向の変化が地上から上空までほぼ垂直に立ったラインとして現れます(寒冷前線の境界面が急勾配であるため)。
- 上の画像では7時から8時にかけて寒冷前線が地上付近を通過している。
- 温暖前線の接近・通過:
- 暖気移流が見られます(高度とともに風向が時計回りに変化)。
- 図上では、風向の変化するライン(前線面)が、時間とともに下がってくるように見えます(温暖前線の境界面が緩やかで、上空から先に暖気が入ってくるため)。
5. 融解層の解析(雪か雨かの判断)
ウィンドプロファイラは「水平風」だけでなく、「鉛直速度(W)」も観測しています。これを使うと、上空のどこで雪が雨に変わったか(融解層=0℃高度)がわかります。
落下速度の違いを利用する
鉛直速度の成分には、大気そのものの上昇・下降に加え、「降水粒子の落下速度」が含まれます。
- 雪(氷晶)の状態:
- 空気抵抗を大きく受けるため、ゆっくり落ちます。
- 落下速度:約 1〜2 m/s
- 融解層(みぞれ):
- 雪が溶け始めると表面が水になり、レーダー反射強度が強くなります(ブライトバンド)。
- 雨(水滴)の状態:
- 完全に水になると密度が高くなり、形状も変わるため、落下速度が急増します。
- 落下速度:約 6〜8 m/s
図での見え方
鉛直流の時系列図において、ある高度を境に「下降流(落下速度)が急激に速くなっている」場合、その高度が融解層(0℃高度)であると判断できます。
まとめ:試験対策チェックリスト
- 観測間隔は10分ごと(常時監視が可能)。
- 原理は電波のドップラー効果(散乱体は空気の乱れや雨粒)。
- 強い雨が降ると、正確な水平風が測れなくなることがある。
- 風速の変化などから前線の通過の解析が可能である。。
- 融解層より下では、粒子の落下速度が急激に大きくなる(雪$\rightarrow$雨)。
学習のヒント:
実技試験では、高層天気図のデータが12時間ごとの「点」であるのに対し、ウィンドプロファイラは「時間の線」で現象を捉えるツールとして使われます。
