前回の「放射の法則」では、物体がその温度に応じてエネルギーを出す仕組みを学びました。今回は、実際に太陽から届くエネルギー(太陽放射)と、地球が宇宙へ出すエネルギー(地球放射)が、大気の中でどのようにやり取りされているかを詳しく見ていきましょう。
1. 短波放射と長波放射
放射はその波長によって性質が大きく異なります。気象学では、エネルギー源が太陽か地球かによって、大きく2つに分類します。
太陽放射(短波放射)
太陽は約 6000 K という非常に高い温度であるため、ウィーンの法則によりピーク波長が約 0.5 μm と非常に短くなります。可視光線を中心としたこの放射を短波放射と呼びます。
地球放射(長波放射)
地球の表面温度は約 288 K(15℃)程度です。そのため、放射されるピーク波長は約 10 μm と長くなります。赤外線を中心としたこの放射を長波放射と呼びます。
💡 試験対策のポイント
「短波放射=太陽」「長波放射=地球」という対応を完璧にしましょう。大気はこの2つに対して、全く異なる反応(吸収のしやすさ)を示します。
2. 大気による太陽放射の吸収
太陽から届く短波放射(100%)は、すべてが地表に届くわけではありません。大気中のさまざまな成分によって吸収・散乱されます。
- オゾン ($O_3$):成層圏付近で、有害な紫外線をほぼ吸収します。
- 水蒸気 ($H_2O$)・二酸化炭素 ($CO_2$):赤外線に近い一部の波長を吸収しますが、可視光線はほとんど通します。
- 散乱:空気分子による「レイリー散乱」や、雲・エーロゾルによる「ミー散乱」によって宇宙や地表へ跳ね返されます。
大気の窓(Atmospheric Window)
長波放射(地球放射)のうち、波長 8〜12 μm 付近の赤外線は、大気中のガスにほとんど吸収されずに宇宙空間へ抜けていくことができます。これを大気の窓と呼び、気象衛星(赤外画像)はこの窓を利用して地表や雲の温度を観測しています。
3. 地球大気の熱収支
地球全体の温度が一定に保たれているのは、入ってくるエネルギーと出ていくエネルギーがバランスしているからです。太陽放射の総量を「100」とした場合の標準的な配分(熱収支)を覚えましょう。
| 項目 | 割合(数値) | 内訳 |
| アルベド(反射) | 30 | 宇宙へそのまま戻る(雲・地表など) |
| 大気による吸収 | 23 | オゾン、水蒸気、雲などが吸収 |
| 地表による吸収 | 47 | 陸地や海が吸収 |
※数値は資料により若干異なりますが、「反射 30:吸収 70(大気 20+地表 50 弱)」という大枠を掴むことが大切です。
4. 地表と大気の放射収支の計算
試験では、特定の層(地表や大気層)に注目して、「入るエネルギー = 出るエネルギー」という方程式を立てる問題が出題されます。
放射収支の考え方

地表での放射収支
大気層は太陽放射エネルギーを受け取らないので、地表での放射のバランスから下記の式が成り立ちます。
大気層での放射収支
大気層での放射のバランスから下記の式が成り立ちます。
地表の温度
地表の温度は上の式を変形すると
地表面は大気層による再加熱により温まります。
