気象学では、太陽から届く光(日射)や、地球から出ていく熱(地球放射)、そして気象レーダーの電波など、すべてを「電磁波」として扱います。
1. 電磁波の基本的な性質
電磁波は、波としての性質を持っています。試験で重要なのは、以下の基本式と、波長による分類です。
1.1 基本式
$$c = f \lambda$$
- $c$ : 光の速さ(約 $3 \times 10^8 \text{m/s}$ で一定)
- $f$ : 周波数(1秒間に波が揺れる回数)
- $\lambda$ : 波長(波の山から山までの長さ)

意味:
光の速さは一定なので、「波長が長いほど、周波数は低い」、「波長が短いほど、周波数は高い」という反比例の関係があります。
1.2 波長による分類(スペクトル)
気象学で扱う主な領域は以下の通りです。
- 紫外線: 波長が短い(約0.4μm未満)。オゾン層で吸収される。
- 可視光線: 人間の目に見える光(0.4μm〜0.7μm)。
- 紫・青: 波長が短い。
- 赤: 波長が長い。
- 赤外線: 波長が長い(0.7μm以上)。地球放射(熱)や気象衛星画像で利用。
- マイクロ波: さらに波長が長い(cm単位)。気象レーダーで利用。

2. 散乱の原理
光(電磁波)が空気中の粒子にぶつかって進路を変えることを「散乱」と言います。
どの散乱が起きるかは、「粒子の大きさ(半径 $r$)」と「光の波長($\lambda$)」のサイズ比で決まります。
試験では数式よりも、以下のレイリー散乱とミー散乱の使い分けが問われます。
3. レイリー散乱 (Rayleigh Scattering)
空気がきれいな日に、空が青く見える理由です。
- 条件: 粒子の大きさが、光の波長よりも極めて小さい場合。
- 対象粒子:酸素や窒素などの空気分子
- 散乱の強さ:波長の4乗に反比例する ($I \propto \frac{1}{\lambda^4}$)
- これが最重要公式です。
- 波長が短い(青・紫)ほど、強烈に散乱されます。
- 波長が長い(赤)ほど、散乱されにくいです。
気象現象への応用
- 昼間の空が青い: 太陽光のうち、波長の短い「青色」が空気分子によって空一面に激しく散乱されるため、空が青く見えます。
- 夕焼けが赤い: 太陽高度が低くなると、光が通る空気の層が長くなります。青い光は途中で散乱され尽くして届かず、散乱されにくい「赤い光」だけが目に届くため、夕日は赤く見えます。
4. ミー散乱 (Mie Scattering)
雲が白く見える理由です。
- 条件: 粒子の大きさが、光の波長とほぼ同じか、大きい場合。
- 対象粒子:エーロゾル(ちり)、雲粒
- 散乱の性質: 波長にあまり依存しない。
- どの色の光も、ほぼ同じ強さで散乱します。
- 特徴:
- 前方向(光が進む方向)への散乱が強いです。
気象現象への応用
- 雲が白い: 太陽光(虹色の混合=白)が、雲粒によって全色まんべんなく散乱されるため、人間の目には白く見えます。
- 空が白っぽい(視程が悪い): PM2.5や黄砂などのエーロゾルが多いと、ミー散乱が起こり、空の青さが薄れて白っぽく見えます。
5. 虹
虹は「散乱」ではなく、水滴の中での「屈折」と「反射」によって起こる現象です。
太陽を背にして立った時、正面に見えます。
5.1 主虹
私たちがよく見る、普通の虹です。

- プロセス: 空気 $\rightarrow$ 水滴(屈折) $\rightarrow$ 内部で1回反射 $\rightarrow$ 水滴 $\rightarrow$ 空気(屈折)
- 色の順番: 外側が赤、内側が紫。
- 見える角度: 太陽の光の進む方向から約42度の方向。
5.2 副虹
主虹の外側にうっすらと見える、2つ目の虹です。

- プロセス: 水滴の内部で2回反射します。
- 色の順番: 主虹と逆(外側が紫、内側が赤)。
- 特徴: 反射回数が多いため、光が弱く暗くなります。

5.3 分散の原理
水滴に入るとき、光の色(波長)によって屈折率が違うためです。
- 紫(波長が短い): 大きく曲がる(屈折率が大きい)。
- 赤(波長が長い): あまり曲がらない(屈折率が小さい)。この角度のズレが、色の帯となって現れます。
電磁波とは、電場と磁場が波として伝わる現象であり、光もその一種です。
気象の分野では、太陽光の散乱や吸収、大気中での光学現象(虹・暈など)を理解するために、電磁波の性質を正しく理解することが必要となります。
