11-2 予報と警報

気象業務法では、「予報」と「警報」を明確に区別しています。特に警報は、人命に関わる重要な情報であるため、発表権限や伝達方法に厳格なルールが定められています。

1. 定義:予報と警報の違い(第2条)

試験では、言葉の定義が問われます。「重大な災害」というキーワードが警報の核心です。

用語定義(法第2条)解説
予報観測の成果に基いて、気象、地象(地震及び火山)、津波、高潮、波浪又は洪水の現況及び将来を予想して発表するもの。未来の予想だけでなく、「現況(今の状態)」の解析も含みます。
※注意報は、法的には「予報」の一種に含まれます。
警報重大な災害の起るおそれのある旨を警告して行う予報予報の一種ですが、「重大な災害」を警告する点に特化しています。

試験のポイント:

  • 「注意報」という単語は、気象業務法の定義(第2条)には出てきません。法的には、注意報は「災害の起こるおそれがある旨を注意して行う予報」として扱われ、実務上運用されています。
  • 津波は「予報」と「警報」の対象ですが、「注意報」の対象としても法的に明記されています(第14条の2)。

2. 気象庁の義務(第13条〜)

国の機関である気象庁には、国民の生命・財産を守るために必ず行わなければならない義務があります。

2.1 一般の利用のための予報・警報(第13条)

気象庁長官は、全国的な予報・警報を行わなければなりません。

  • 対象: 気象、地象(地震・火山)、津波、高潮、波浪、洪水
  • 種類:
    • 予報: 一般の利用に適合するもの。
    • 警報: 重大な災害の起こるおそれがある場合。

2.2 二次災害への警報(第14条)

気象庁は、気象や地震の警報をする際、それに伴って生じる二次的な災害についても警報しなければなりません。

  • 例: 地震発生時 $\rightarrow$ 「津波」の警報、「火災」の警報(気象条件による延焼の危険など)。

3. 警報の制限(第23条):独占禁止の例外

ここは法規分野で最も重要な条文の一つです。「誰が警報を出せるか」という問題です。

第23条(警報の制限)

気象庁以外の者は、気象、地象、津波、高潮、波浪又は洪水の警報をしてはならない。

  • 原則: 警報は気象庁の独占業務です。民間気象会社や予報士は、たとえ正しい予測であっても「警報」を発表することはできません。
  • 理由: 複数の機関から異なる「警報」が出ると、住民が混乱し、避難行動に支障が出るためです。
  • 例外(許可されればできる場合):
    • 相互の協力による場合(自衛隊と気象庁の連携など)。
    • 多数の者の利用に供しない場合(特定の工事現場内だけで使う「現場警報」など、一般市民に伝わらない閉じた空間での運用)。

ひっかけ問題対策:

  • 「気象予報士の資格があれば、独自の警報を出せる」 $\rightarrow$ $\times$(不可)
  • 「民間事業者は『暴風の恐れがある』という情報を出してはいけない」 $\rightarrow$ $\times$(間違い)。「暴風警報」という名称を使わなければ、危険性を伝える「予報」を行うことは可能です。

4. 特別の警報(特別警報)(第13条の2)

平成25年に新設された規定です。通常の警報をはるかに超える危険がある場合に出されます。

  • 定義: 予想される現象が特に異常であるため、重大な災害の起こるおそれが著しく大きい場合。
  • 対象となる現象:
    1. 気象(暴風、豪雨、豪雪、暴風雪、高波、高潮)
    2. 地象(地震動、火山現象)
    3. 津波
    • 注意: 「洪水」は特別警報の名称としては存在しません(大雨特別警報の中に浸水害などの要素が含まれますが、法的な区分として注意)。※2026年1月現在

5. 警報事項の伝達(第15条)

気象庁が作成した警報が、どのように住民や防災機関に届くか(伝達ルート)の規定です。試験では「通知義務」と「周知努力義務」の違いが問われます。

5.1 気象庁からの通知(第15条1項・2項)

気象庁長官は、警報(特別警報を含む)をしたときは、直ちに以下の機関に通知しなければなりません。

  1. 警察庁
  2. 国土交通省(海上保安庁を含む)
  3. 海上保安庁
  4. 都道府県知事
  5. NTT東日本・西日本(電気通信事業者)
  6. NHK(日本放送協会)

5.2 住民への周知(第15条3項〜)

通知を受けた機関は、国民に知らせるために動きます。

  • NTT・警察庁: その法令の定めるところにより、直ちにこれを関係者(市町村長など)に通知するよう努めなければならない(努力義務)。
  • 都道府県知事: 直ちにこれを関係市町村長に通知するよう努めなければならない(努力義務)。
  • 市町村長: 直ちにこれを公衆(住民)および官公署に周知させるよう努めなければならない(努力義務)。
  • NHK: 直ちにその警報事項を放送しなければならない(義務)。

ポイント:

  • NHKは放送義務がありますが、民間放送局には法的な放送義務はありません(協定などで放送していますが、法的にはNHKのみ)。
  • 最終的に住民に知らせる市町村長は「努力義務」となっています(強制力を持たせすぎると、物理的に不可能な状況で責任を問われるため)。

6. まとめ:予報と警報の対比表

試験前にこの表を暗記しましょう。

項目予報警報
定義現況と将来の予想重大な災害の警告
気象庁以外の実施許可を受ければ可能禁止(第23条)
気象予報士「現象の予想」に必須(民間は出せないので関係なし)
NHKの放送義務なしあり(第15条)
対象現象気象、地象、津波、高潮、波浪、洪水左記と同じ