気象予報士試験では、700 hPa天気図から上空の湿り具合や大気の流れを読み取り、雲や降水が発生しやすい場所を考える問題が出題されます。
850 hPa天気図では下層の気温や風、温度移流に注目しました。一方、700 hPa天気図では、湿数から分かる空気の湿り具合と、上昇流・下降流などの鉛直運動が重要になります。
ただし、一般的な700 hPa天気図と、鉛直流を表示した数値予報天気図では、示される気象要素が異なります。それぞれの役割を理解しながら、雲や降水につながる大気の状態を読み取れるようにしましょう。
1. 700 hPa天気図とは

700 hPaはどのくらいの高さ?
700 hPa天気図は、気圧が700 hPaとなる面の気象要素を表した高層天気図です。
標準的な大気では、700 hPa面は地上からおよそ3,000 mの高さに相当します。ただし、実際の高度は気温などの大気の状態によって変わります。
700 hPaは、地上と500 hPaのほぼ中間にあたる高度です。気象予報士試験では、雲や降水に関係する湿潤空気を考える際に重要な気圧面です。
700 hPa天気図で分かること
700 hPa天気図や、700 hPaの気象要素を含む数値予報天気図からは、主に次の情報を読み取れます。
- 高度場:700 hPa面の高度分布や上空の流れ
- 気温:上空の気温分布
- 風向・風速:中層付近の空気の流れ
- 湿数・湿潤域:空気の湿り具合や湿った領域
2. 700 hPa天気図の基本的な記号
等高度線
等高度線は、700 hPa面の高度が等しい地点を結んだ線です。
等高度線の分布から、上空の高度場や空気の流れの特徴を把握できます。
地上天気図の等圧線は同じ気圧の地点を結んだ線ですが、700 hPa天気図の等高度線は、一定の気圧面がどの高度にあるかを表します。両者を混同しないようにしましょう。
等温線
等温線は、気温が等しい地点を結んだ線です。気温の高い領域や低い領域を把握するために使います。
700 hPa天気図では、気温の分布を確認することで、周囲より暖かい空気や冷たい空気が存在する場所を把握できます。
ただし、700 hPaの気温だけから地上の気温や降水形態を直接決めることはできません。地上までの気温分布や湿度なども考慮する必要があります。
風向・風速を示す矢羽根
高層天気図では、風向・風速が矢羽根で表されます。
風向は風が吹いてくる方向を示します。西風なら、西から東へ向かって吹く風です。
700 hPa付近の風を確認することで、湿った空気がどの方向へ運ばれているか、湿潤域がどのように移動しそうかを考える手がかりになります。
3. 湿数とは何か
700 hPa天気図を読むうえで、特に重要なのが湿数です。
湿数の定義
湿数とは、気温と露点温度の差です。
$$\text{湿数}=\text{気温}-\text{露点温度}$$
例えば、気温が10 ℃、露点温度が7 ℃の場合、湿数は3 ℃です。
湿数が小さいほど気温と露点温度が近く、空気は飽和に近い状態にあります。湿数が大きいほど、一般に空気は乾燥しています。
湿数から分かる空気の湿り具合
湿数の大小と空気の状態は、次のように整理できます。
| 湿数 | 空気の状態の目安 |
|---|---|
| 小さい | 飽和に近く、湿っている |
| 大きい | 気温と露点温度の差が大きく、乾燥している |
湿数が小さい領域では、雲が存在していたり、雲が形成されやすい状態になっていたりする可能性があります。
ただし、湿数が小さいことだけで、必ず雲や降水があるとは判断できません。雲や降水の発生には、空気の上昇、気温の鉛直分布、水蒸気の供給なども関係します。
湿数と相対湿度の違い
湿数は気温と露点温度の差であり、相対湿度そのものではありません。
一般に、同じ気温であれば、湿数が小さいほど相対湿度は高くなります。ただし、湿数から相対湿度を正確に求めるには、気温などの条件を考慮する必要があります。
試験では、湿数が小さいことを「湿っている」と表現できるようにしておきましょう。
4. 湿潤域を読み取る
湿潤域とは、空気が比較的湿っている領域のことです。700 hPa付近の湿潤域を把握すると、雲が広がりやすい場所や、降水に関係する湿った空気の分布を考える手がかりになります。
湿潤域の確認方法
700 hPa天気図では、湿数の値や、湿潤域が表示された天気図の領域表示を確認します。
- 湿数が小さい領域:空気が湿っている可能性が高い
- 湿数が大きい領域:空気が乾燥している可能性が高い
- 湿潤域の広がり:中層付近で湿った空気が分布している範囲を把握する手がかり
湿潤域が広がっている場合、雲が存在しやすい条件が整っている可能性があります。しかし、湿っていることと、空気が上昇していることは別の条件です。
湿潤域の位置だけで降水の有無を判断するのではなく、上昇流や地上の前線・低気圧の位置なども組み合わせて解析しましょう。
5. 地上・850 hPa・700 hPa天気図を組み合わせる
700 hPa天気図だけでは、地上で雨が降るかどうかを確定することはできません。地上天気図や850 hPa天気図と組み合わせることで、降水につながる条件を整理できます。
解析の手順
- 地上天気図で低気圧や前線の位置を確認する。
- 850 hPa天気図で下層の気温、風向・風速、湿った空気の流入を確認する。
- 700 hPa天気図で湿数や湿潤域を確認する。
- 上昇流を示す資料があれば、空気が上昇している領域を確認する。
- これらの情報を組み合わせ、雲や降水が発生しやすい領域を考える。
例えば、地上に前線があり、850 hPaで湿った空気が流入し、700 hPaでも湿潤域と上昇流が重なっている場合、雲や降水が発生しやすい条件がそろっている可能性があります。
ただし、実際の降水量や降水域は、上昇流の強さや持続時間、水蒸気の供給、大気の安定度などによって変わります。
6. 気象予報士試験で押さえたいポイント
700 hPa天気図では、次の内容を重点的に理解しておきましょう。
- 700 hPa面が地上からおよそ3,000 mに相当すること。ただし高度は変化する。
- 等高度線・等温線・風向風速の基本的な読み方
- 湿数の定義と、湿数が小さいほど空気が湿っていること
- 湿潤域だけでは降水の有無を断定できないこと
- 上昇流による膨張・冷却と、下降流による圧縮・昇温
- 湿潤域と上昇流を組み合わせて雲や降水の可能性を考えること
- 地上・850 hPa・700 hPaの情報を組み合わせて解析すること
特に重要なのは、「湿っていること」と「上昇していること」を区別して考えることです。湿潤域があっても上昇流がなければ雲が発達しない場合があり、上昇流があっても乾燥していれば雲が形成されにくい場合があります。
7. まとめ
700 hPa天気図は、中層付近の湿り具合や気象要素の分布を把握し、雲や降水に関係する大気の状態を解析するための重要な資料です。
まずは湿数の意味と、湿数が小さいほど空気が湿っているという関係を理解しましょう。次に、上昇流・下降流の働きを学び、湿潤域と鉛直運動を組み合わせて考えることが大切です。
地上天気図で低気圧や前線を確認し、850 hPa天気図で下層の気温と風を、700 hPa天気図で湿潤域や上昇流を確認する。このように複数の資料を組み合わせることで、雲や降水が発生する仕組みをより深く理解できます。
次は500 hPa天気図を学び、トラフ・リッジ・渦度などから上空の流れと低気圧の発達に関係する仕組みを読み取っていきましょう。
