地上天気図には、高気圧や低気圧、前線、台風などが記号で表されており、天気図の理解には不可欠です。実際の気象予報士試験でも問1で必ずといっていいほど出題されます。
この記事では、前項の国際天気記号から発展し、天気図内のさらなる略語や記号の意味を解説します。
1. 高気圧・低気圧・熱帯低気圧
| 記号・表記 | 意味 |
|---|---|
| 高、H | 高気圧 |
| 低、L | 低気圧または低圧部 |
| 熱低、TD | 熱帯低気圧 |
| 台風、TYなど | 台風。英字表記や番号は資料の種類によって異なる |
| × | 高気圧・低気圧などの中心位置を示す記号として使用されることがある |
日本周辺域の天気図では「高」「低」などの日本語表記が使われます。一方、アジア太平洋域の天気図では、海外でも利用できるように「H」「L」などの英字表記が使われます。
高気圧や低気圧の近くにある数字は、中心気圧を示している場合があります。また、矢印や速度の数字が付いている場合は、移動方向や移動速度を表します。
ただし、記号や数字の表示方法は天気図の種類によって異なるため、図の凡例を確認しましょう。
2. 天気図で使われる英語略語
アジア太平洋域の実況天気図や予想天気図には、英語の略語が多く使われています。試験で見かけやすいものをまとめます。
気圧配置に関する略語
| 略語 | 英語 | 意味 |
|---|---|---|
| H | High | 高気圧 |
| L | Low | 低気圧・低圧部 |
| TD | Tropical Depression | 熱帯低気圧 |
| TS | Tropical Storm | 熱帯暴風 |
| STS | Severe Tropical Storm | 強い熱帯暴風 |
| T | Typhoon | 台風 |
海上警報
| 略号 | 意味 | 発表基準 |
|---|---|---|
| [W] | 海上風警報 | 最大風速28ノット以上34ノット未満の状態にすでになっているか、または24時間以内にその状態になると予想される場合 |
| [GW] | 海上強風警報 | 最大風速34ノット以上48ノット未満の状態にすでになっているか、または24時間以内にその状態になると予想される場合 |
| [SW] | 海上暴風警報 | 台風の場合は最大風速48ノット以上64ノット未満。温帯低気圧の場合は48ノット以上の状態にすでになっているか、または24時間以内にその状態になると予想される場合 |
| [TW] | 海上台風警報 | 台風による最大風速64ノット以上の状態にすでになっているか、または24時間以内にその状態になると予想される場合 |
| FOG[W] | 海上濃霧警報 | 視程(水平方向に見通せる距離)が0.3海里(約500m)以下(瀬戸内海では0.5海里(約1km)以下)の状態にすでになっているか、または24時間以内にその状態になると予想される場合 |
低気圧の説明文で使われる略語
低気圧の状態
DEVELOPING LOW:発達中の低気圧(今後さらに気圧が下がる、または風が強くなると予想されるもの)。DEVELOPED LOW:発達した低気圧(すでにピークか、発達しきった状態のもの)。
進行方向や速さ
N(North:北) /S(South:南) /E(East:東) /W(West:西)NE(北東) /NW(北西) /SE(南東) /SW(南西)NNE(北北東) /WNW(西北西) などの3文字表現もあります。SLOWLY:ゆっくり進む。ALMOST STNR:ほとんど停滞している。
風
MAX WINDS:最大風速。GUST:最大瞬間風速。
単位(ノットと海里)
KT(KNOTS):ノット(速度・風速の単位)。1 KT = 時速約1.85km。NM(NAUTICAL MILES):海里(距離の単位)。1 NM = 1.852km。
範囲・エリアの表現
WITHIN:〜以内。OVER:~以上。SEMICIRCLE:半円(例:N-SEMICIRCLE= 北側半円)。ELSEWHERE:その他の場所、反対側。
時間の表現
FOR NEXT 24 HOURS:今後24時間先にかけて(予想される風の範囲など)。
3. UTCと日本標準時の換算
UTCとは?
UTC(Coordinated Universal Time)は、協定世界時と呼ばれる世界共通の時刻です。国際的な気象資料では、観測時刻や予報対象時刻をUTCで表示することがあります。
UTCは経度0°の時刻が基準となっており、東経135°を基準とする日本標準時(JST)は、UTCより9時間進んでいます。
日本標準時(JST)=UTC+9時間
逆に、日本標準時からUTCに換算するときは9時間を引きます。
UTCから日本標準時への換算例
| UTC | 日本標準時(JST) |
|---|---|
| 00 UTC | 同日09時 |
| 03 UTC | 同日12時 |
| 06 UTC | 同日15時 |
| 09 UTC | 同日18時 |
| 12 UTC | 同日21時 |
| 15 UTC | 翌日00時 |
| 18 UTC | 翌日03時 |
| 21 UTC | 翌日06時 |
例えば、10月20日00 UTCは、日本時間では10月20日09時です。
一方、10月20日18 UTCは、9時間を加えると10月21日03時になります。日付をまたぐ場合があるので注意しましょう。
天気図の時刻表記
天気図には、観測データの時刻と予報対象時刻が記載されていることがあります。
例えば、次の表記を考えます。
200000UTC OCT
この場合、「20日00時00分UTC」を表し、日本時間では同じ日の09時00分となります。実際の資料では年が併記されることもあります。
また、次のような表記もあります。
FCST FOR 210000UTC
これは、予報対象時刻が21日00時00分UTCであることを示します。日本時間では21日09時00分です。
天気図を読む際には、次の点を確認しましょう。
- 観測時刻なのか、予報対象時刻なのか
- UTC表記なのか、日本標準時なのか
- 日付をまたいでいないか
これらを取り違えると、実況天気図と予想天気図の時間関係を誤って解釈する可能性があります。
4. 天気図に描かれる線
天気図には、気圧や気温、高度などが等しい地点を結んだ線が描かれます。これらの線は、気象場の分布や特徴を読み取るために重要です。
等圧線
等圧線は、地上の気圧が等しい地点を結んだ線です。地上天気図では、高気圧や低気圧の位置、気圧配置、風の強さを考える際に使います。
日本周辺域の実況天気図では、一般に次の間隔で等圧線が描かれます。
- 太い実線:20 hPaごと
- 細い実線:4 hPaごと
- 細い破線:必要に応じて2 hPaごとの補助線
等圧線の間隔が狭い場所では、気圧の距離に対する変化が大きく、一般に風が強くなりやすい傾向があります。
ただし、等圧線の間隔だけで風速が一意に決まるわけではありません。実際の風は、地表面の摩擦や大気の状態などにも影響されます。
等温線
等温線は、気温が等しい地点を結んだ線です。
気温の分布を把握するために使われ、地上天気図や高層天気図などで気温の特徴を確認する際に役立ちます。
等温線の間隔が狭い場所では、短い距離で気温が大きく変化していることが分かります。前線付近などでは、気温の分布に注目することが重要です。
等高度線
等高度線は、一定の気圧面において、高度が等しい地点を結んだ線です。高層天気図で使用されます。
例えば、500 hPa天気図では、気圧が500 hPaとなる面の高度を等高度線で表します。
等高度線の形状から、上空の気圧の谷や尾根、気圧配置の特徴などを読み取ることができます。
地上天気図の等圧線と高層天気図の等高度線は、どちらも分布を線で表しますが、示している物理量は異なります。
トラフ(気圧の谷)
トラフは、周囲より気圧が低い、または高度が低い方向に伸びる谷状の領域を指します。高層天気図では、等高度線の形状などから上空のトラフを解析します。
トラフの接近や通過は、上昇流や雲・降水の発生などに関係することがあります。ただし、トラフがあるだけで必ず雨が降るわけではなく、水蒸気や下層の状態なども合わせて判断します。
リッジ(気圧の尾根)
リッジは、周囲より気圧または高度が高い方向に伸びる尾根状の領域を指します。高層天気図では、等高度線が張り出した形状などから解析します。
トラフとリッジは、上空の気圧配置を理解するための基本用語です。高層天気図を読む際には、等高度線の曲がり方やトラフ・リッジの位置に注目しましょう。
5. 天気図に示される領域・範囲
天気図や予想図では、線で囲まれた範囲や、特定の現象が予想される領域が示されることがあります。
強風域・暴風域
台風情報では、強風域や暴風域が示されます。
- 強風域:風速15m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲
- 暴風域:風速25m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲
これらは台風の周辺で強い風が吹く範囲を把握するために使われます。台風の階級の詳細については、前の記事「気象予報の用語と基準まとめ」で解説しています。
予報円
予報円は、台風などの進行方向や予想位置に関して、予報対象時刻に中心が入る可能性が高い範囲を円で示したものです。
予報円は、台風の大きさや暴風域の広さを示す円ではありません。また、予報円の円周上を台風が進むことを意味するものでもありません。
予報円が大きいほど、予報対象時刻における台風の中心位置の不確実性が大きいことを表します。
海上の悪天域
アジア太平洋域の予想天気図には、海上の強風域、濃霧域が表示される場合があります。
これらは船舶の安全に関わる現象の発生域や予想域を示しています。
海上の悪天域は、地上天気図に描かれる等圧線や前線とは異なり、特定の気象現象が予想される範囲を示すものです。図の凡例を確認して、何の現象を示す領域なのかを判断しましょう。
6. まとめ
天気図・気象資料を読み取るには、記号や略語を覚えるだけでなく、それぞれが何を表しているのかを理解することが重要です。
特に、次のポイントは試験前に確認しておきましょう。
- UTCは日本標準時より9時間遅れている
- それぞれの略語や英語を理解する
- 等圧線・等温線・等高度線は、それぞれ異なる物理量を表す
- 予報円は台風の大きさではなく、予報対象時刻における中心位置の不確実性を示す
- 天気図の種類や凡例を確認し、記号や領域の意味を判断する
これらの基礎知識を身につけておくと、実技試験で天気図や気象資料から必要な情報を効率よく読み取れるようになります。
