11-6 気象業務法の関連法規

気象庁から出された防災気象情報は、他の法律に基づいて具体的な防災行動(避難指示や水防活動)に変換されます。

1. 災害対策基本法

日本の防災体制の根幹をなす法律です。

1.1 実施責任者(誰がやるか)

災害対応の最前線は「基礎自治体(市町村)」です。

  • 市町村長: 住民の生命を守る第一次的な責任者。避難指示の発令権限を持つ。
  • 都道府県知事: 市町村を支援し、広域的な調整を行う。
  • 内閣総理大臣: 非常災害・緊急災害時に指揮を執る。

1.2 避難情報の発令(第60条など)

試験で最も出るのがこの対応関係です。

警戒レベル情報の名称発令する人対象者意味
レベル3高齢者等避難市町村長高齢者等避難に時間がかかる人は避難を開始する。
レベル4避難指示市町村長全員全員避難。危険な場所から退避する。
レベル5緊急安全確保市町村長全員災害が既に発生・切迫。命を守る最善の行動をとる。
※必ず発令されるとは限らない。

ポイント:

  • 気象庁が出すのは「注意報・警報(判断材料)」です。
  • それを見て「避難指示(行動命令)」を出すのは市町村長です。気象庁長官ではありません。

1.3 指定行政機関の長等の義務(第52条)

気象庁長官(指定行政機関の長)は、災害のおそれがあると認めるときは、法令の定めるところにより、直ちにその状況を予測し、必要な措置をとらなければなりません(予報・警報の発表など)。


2. 水防法

洪水や高潮などによる水害を防ぐための法律です。

2.1 水防活動の責任

  • 水防管理者: 通常は市町村(または水防事務組合)が担います。
  • 水防団: 実際に土嚢積みなどの活動を行う組織。

2.2 洪水予報(第10条・11条)

大きな河川では、気象庁と河川管理者が共同して予報を行います。

予報の種類対象河川行う人通知先
洪水予報洪水予報指定河川
(流域が大きく被害甚大なおそれがある河川)
気象庁長官

国土交通大臣(または都道府県知事)
知事、関係市町村長
(一般への周知義務もあり)

指定河川洪水予報の標題:

  1. 氾濫注意情報(レベル2相当)
  2. 氾濫警戒情報(レベル3相当)
  3. 氾濫危険情報(レベル4相当)
  4. 氾濫発生情報(レベル5相当)

2.3 水位周知河川(第13条)

洪水予報指定河川以外の中小河川でも、避難判断のために水位の情報が必要です。

  • 内容: 特別な警戒水位に達したときに、その旨を通知する。
  • 行う人: 都道府県知事など(河川管理者)。
  • 通知先: 関係市町村長(一般への周知義務はない場合が多いが、実際はネット等で公開される)。

3. 消防法

火災の予防や消火に関する法律です。「火災警報」に関する規定が重要です。

3.1 火災の警報(第22条)

気象業務法では「乾燥注意報」などを出しますが、それを受けて消防法上の措置をとるのは市町村長です。

第22条(火災に関する警報)

気象庁長官等の気象通報(乾燥注意報など)等の成果により、火災の予防上危険であると認めるときは、市町村長は、火災の警報を発することができる。

  • 制限命令: この警報が出ている間、市町村長は区域内の「火の使用の制限(焚き火禁止など)」を命じることができます。

混同注意:

  • 乾燥注意報: 気象庁が出す(気象の状況)。
  • 火災警報: 市町村長が出す(火の使い方への警告)。

4. 土砂災害防止法

がけ崩れや土石流対策に関する法律です。

土砂災害警戒情報

  • 発表者: 気象庁都道府県共同で発表します。
  • 目的: 市町村長が「避難指示」を出す判断を支援するため。
  • 位置づけ: 警戒レベル4相当の情報。これが出たら、市町村長は避難指示の発令を検討します。

5. 関連法規まとめ一覧表

「情報」と「実施者」の組み合わせを整理しましょう。

法律名情報・活動の名称主な実施・発令者共同実施者
災害対策基本法避難指示市町村長なし
災害対策基本法防災気象情報の発表義務指定行政機関の長
(気象庁長官等)
なし
水防法指定河川洪水予報気象庁長官国土交通大臣
(または都道府県知事)
水防法水防警報(待機・出動)水防管理者
(市町村・水防事務組合)
なし
消防法火災警報市町村長なし
土砂災害防止法土砂災害警戒情報気象庁都道府県