気象庁から出された防災気象情報は、他の法律に基づいて具体的な防災行動(避難指示や水防活動)に変換されます。
1. 災害対策基本法
日本の防災体制の根幹をなす法律です。
1.1 実施責任者(誰がやるか)
災害対応の最前線は「基礎自治体(市町村)」です。
- 市町村長: 住民の生命を守る第一次的な責任者。避難指示の発令権限を持つ。
- 都道府県知事: 市町村を支援し、広域的な調整を行う。
- 内閣総理大臣: 非常災害・緊急災害時に指揮を執る。
1.2 避難情報の発令(第60条など)
試験で最も出るのがこの対応関係です。
| 警戒レベル | 情報の名称 | 発令する人 | 対象者 | 意味 |
| レベル3 | 高齢者等避難 | 市町村長 | 高齢者等 | 避難に時間がかかる人は避難を開始する。 |
| レベル4 | 避難指示 | 市町村長 | 全員 | 全員避難。危険な場所から退避する。 |
| レベル5 | 緊急安全確保 | 市町村長 | 全員 | 災害が既に発生・切迫。命を守る最善の行動をとる。 ※必ず発令されるとは限らない。 |
ポイント:
- 気象庁が出すのは「注意報・警報(判断材料)」です。
- それを見て「避難指示(行動命令)」を出すのは市町村長です。気象庁長官ではありません。
1.3 指定行政機関の長等の義務(第52条)
気象庁長官(指定行政機関の長)は、災害のおそれがあると認めるときは、法令の定めるところにより、直ちにその状況を予測し、必要な措置をとらなければなりません(予報・警報の発表など)。
2. 水防法
洪水や高潮などによる水害を防ぐための法律です。
2.1 水防活動の責任
- 水防管理者: 通常は市町村(または水防事務組合)が担います。
- 水防団: 実際に土嚢積みなどの活動を行う組織。
2.2 洪水予報(第10条・11条)
大きな河川では、気象庁と河川管理者が共同して予報を行います。
| 予報の種類 | 対象河川 | 行う人 | 通知先 |
| 洪水予報 | 洪水予報指定河川 (流域が大きく被害甚大なおそれがある河川) | 気象庁長官 + 国土交通大臣(または都道府県知事) | 知事、関係市町村長 (一般への周知義務もあり) |
指定河川洪水予報の標題:
- 氾濫注意情報(レベル2相当)
- 氾濫警戒情報(レベル3相当)
- 氾濫危険情報(レベル4相当)
- 氾濫発生情報(レベル5相当)
2.3 水位周知河川(第13条)
洪水予報指定河川以外の中小河川でも、避難判断のために水位の情報が必要です。
- 内容: 特別な警戒水位に達したときに、その旨を通知する。
- 行う人: 都道府県知事など(河川管理者)。
- 通知先: 関係市町村長(一般への周知義務はない場合が多いが、実際はネット等で公開される)。
3. 消防法
火災の予防や消火に関する法律です。「火災警報」に関する規定が重要です。
3.1 火災の警報(第22条)
気象業務法では「乾燥注意報」などを出しますが、それを受けて消防法上の措置をとるのは市町村長です。
第22条(火災に関する警報)
気象庁長官等の気象通報(乾燥注意報など)等の成果により、火災の予防上危険であると認めるときは、市町村長は、火災の警報を発することができる。
- 制限命令: この警報が出ている間、市町村長は区域内の「火の使用の制限(焚き火禁止など)」を命じることができます。
混同注意:
- 乾燥注意報: 気象庁が出す(気象の状況)。
- 火災警報: 市町村長が出す(火の使い方への警告)。
4. 土砂災害防止法
がけ崩れや土石流対策に関する法律です。
土砂災害警戒情報
- 発表者: 気象庁と都道府県が共同で発表します。
- 目的: 市町村長が「避難指示」を出す判断を支援するため。
- 位置づけ: 警戒レベル4相当の情報。これが出たら、市町村長は避難指示の発令を検討します。
5. 関連法規まとめ一覧表
「情報」と「実施者」の組み合わせを整理しましょう。
| 法律名 | 情報・活動の名称 | 主な実施・発令者 | 共同実施者 |
| 災害対策基本法 | 避難指示 | 市町村長 | なし |
| 災害対策基本法 | 防災気象情報の発表義務 | 指定行政機関の長 (気象庁長官等) | なし |
| 水防法 | 指定河川洪水予報 | 気象庁長官 | 国土交通大臣 (または都道府県知事) |
| 水防法 | 水防警報(待機・出動) | 水防管理者 (市町村・水防事務組合) | なし |
| 消防法 | 火災警報 | 市町村長 | なし |
| 土砂災害防止法 | 土砂災害警戒情報 | 気象庁 | 都道府県 |
