7-6 温度風:風の垂直変化と気温の関係

「地上では南風だったのに、上空の雲は西から東へ流れている」
このように、高度によって風向きや風速が違うことはよくあります。

実は、この「上層と下層の風のズレ」を見るだけで、その場所の気温が今後どうなるか(暖かくなるか寒くなるか)が分かります。その鍵となる概念が温度風です。


1. 温度風の原理

温度風とは?

温度風とは、実際に吹いている風のことではありません。
ある2つの高度(例えば $850\text{hPa}$ と $500\text{hPa}$)における地衡風のベクトルの差(引き算)のことです。

$$
\vec{V_T} = \vec{V_{上層}} – \vec{V_{下層}}
$$

  • $\vec{V_T}$: 温度風ベクトル
  • $\vec{V_{上層}}$: 上層の地衡風
  • $\vec{V_{下層}}$: 下層の地衡風

なぜ風の差が「温度」なのか?

これには「層厚」が関係しています。
「暖かい空気は膨張して層が厚くなり、冷たい空気は収縮して層が薄くなる」という性質がありましたね。

  1. ある場所に水平方向の温度差(北が寒く、南が暖かいなど)があるとします。
  2. すると、同じ気圧面でも高度差(傾き)が生じます。
  3. 高度差(傾き)が上空ほど大きくなるため、上空ほど気圧傾度力が強くなり、風が変わります

つまり、「上層と下層で風が違う原因は、そこにある温度差(水平温度傾度)である」といえます。


2. 温度風の向き

温度風の向き(ベクトル)には、地衡風と同じような明確なルールがあります。

🌡️ 温度風の法則
北半球において、温度風を背にして立つと、左手に寒気(低温)、右手に暖気(高温)がある。

これは、地衡風の「バイス・バロットの法則(背にして立つと左が低気圧)」の温度版と考えると分かりやすいです。
等圧線の代わりに「等温線」をイメージしてください。

  • 温度風は、等温線に平行に吹く。
  • 冷たい方を左に見るように吹く。

ベクトル図での理解

試験でよく出る作図です。下層の風に「温度風」を足すと、上層の風になります。

$$
\vec{V_{下層}} + \vec{V_T} = \vec{V_{上層}}
$$

下層の風の赤矢印の先端から、上層の風の青矢印先端へ引いた緑矢印が「温度風」です。
この緑矢印(温度風)の右側に暖気があります。


3. 温度移流(暖気移流・寒気移流)

ここが実技試験での最重要ポイントです。
上空に行くにつれて風向が「時計回り」に変化するか、「反時計回り」に変化するかを見ることで、その場所に暖気が運ばれてきているか(暖気移流)、寒気が運ばれてきているか(寒気移流)を判定できます。

① 暖気移流

風向が、高度とともに時計回り(右回り)に変化する場合。
(例:地上が南風 $\rightarrow$ 上空が西風)

  • 気温が上昇傾向。
    1. 下層風に「温度風」を足して、時計回りに上層風になる場合、温度風のベクトルは図の右側などを向く。
    2. 温度風を背にして右側に暖気がある。
    3. その暖気の方から風が吹いていることになるため、「暖気移流」となる。

② 寒気移流

風向が、高度とともに反時計回り(左回り)に変化する場合。
(例:地上が北風 $\rightarrow$ 上空が西風)

  • 気温が下降傾向。
    1. 下層風に「温度風」を足して、反時計回りに上層風になる。
    2. ベクトルの関係から、風上側に寒気がある配置になるため、「寒気移流」となる。