9-2 気象警報・注意報

気象庁は、大雨や強風などの気象現象によって災害が起こるおそれがある場合に、対象となる市区町村を特定して「注意報」や「警報」を発表し、警戒を呼びかけます。

1. 警報と注意報の種類

気象庁が発表する注意報は16種類、警報は7種類(さらにその上の特別警報が6種類)あります。

「注意報」は災害が発生するおそれがある場合、「警報」は重大な災害が発生するおそれがある場合に発表されます。

警報(全7種類)

重大な災害への警戒を呼びかける情報です。

名称内容(予想される災害リスク)
大雨警報大雨による重大な土砂災害や浸水害が発生するおそれがあるとき。
洪水警報大雨や融雪により河川が増水し、重大な洪水災害が発生するおそれがあるとき。
暴風警報暴風により重大な災害が発生するおそれがあるとき。
暴風雪警報雪を伴う暴風により重大な災害が発生するおそれがあるとき。吹雪による視程障害も含む。
大雪警報大雪により重大な災害が発生するおそれがあるとき。
波浪警報高波により重大な沿岸施設の被害や遭難等の災害が発生するおそれがあるとき。
高潮警報台風等による異常な潮位上昇で、重大な浸水災害が発生するおそれがあるとき。

注意報(全16種類)

災害への注意を呼びかける情報です。

名称内容(予想される災害リスク)
大雨注意報大雨による土砂災害や浸水害が発生するおそれがあるとき。
洪水注意報河川の増水や堤防の損傷などにより洪水災害が発生するおそれがあるとき。
強風注意報強風により災害が発生するおそれがあるとき。
風雪注意報雪を伴う強風により災害が発生するおそれがあるとき。
大雪注意報大雪により住家被害や交通障害等の災害が発生するおそれがあるとき。
波浪注意報高波により災害が発生するおそれがあるとき。
高潮注意報異常な潮位上昇により災害が発生するおそれがあるとき。
雷注意報落雷のほか、急な強い雨、ひょう、突風などにより災害が発生するおそれがあるとき。
融雪注意報融雪による土砂災害や浸水害が発生するおそれがあるとき。
濃霧注意報濃霧により交通機関等に著しい障害が発生するおそれがあるとき。
乾燥注意報空気が乾燥し、火災の危険が大きいとき。
なだれ注意報なだれにより災害が発生するおそれがあるとき。
低温注意報著しい低温により、農作物の被害や水道管の凍結等の災害が発生するおそれがあるとき。
霜注意報早霜や晩霜により農作物に被害が発生するおそれがあるとき。
着氷注意報著しい着氷により通信線や送電線の断線、船の転覆等が発生するおそれがあるとき。
着雪注意報著しい着雪により通信線や送電線の断線等が発生するおそれがあるとき。

2. 主な警報と注意報の発表基準

警報や注意報が発表される基準値(風速何メートルか、雨量何ミリかなど)は、全国一律ではありません。過去の災害実績や地形、地盤の強さ、都市のインフラ状況(除雪能力や排水能力)などを考慮し、市区町村ごとに細かく設定されています。

ここでは「神奈川県 横浜市」の実際の発表基準(令和7年5月29日現在)を例に、どのように基準が設けられているかを解説します。

① 風の基準(暴風・強風)

沿岸部と内陸部で風の強まり方が異なるため、横浜市では陸上と海上で別の基準が設けられています。

  • 強風注意報(陸上) 平均風速 12m/s
  • 暴風警報(陸上) 平均風速 25m/s※風速25m/sは、樹木が根こそぎ倒れたり、屋根瓦が飛散したりする極めて危険な猛烈な風です。

② 雪の基準(大雪)

雪に不慣れな太平洋側の都市部と、雪国とでは基準が全く異なります。

  • 大雪注意報 12時間降雪の深さ 5cm
  • 大雪警報 12時間降雪の深さ 10cm 横浜市などの首都圏では、わずか数センチの積雪でもスリップ事故や交通網の麻痺といった「災害」に直結するため、非常に低い数値で警報・注意報が発表されるよう設定されています。(※豪雪地帯である新潟県湯沢町の大雪警報の基準は「12時間で60cm」と大きな差があります)。

③ 雨の基準(大雨・洪水)と「雨量指数」

かつての大雨の基準は「1時間に○ミリ」といった単純な雨量でしたが、現在は被害の実態により即した「雨量指数」という技術が使われています。

  • 大雨警報(土砂災害) 土壌雨量指数基準107 降った雨が土の中にどれだけ溜まっているかを計算した土壌雨量指数を用います。雨が止んでも、土の中に水分が残っていれば崖崩れのリスクが続くため、警報は継続されます。
  • 大雨注意報(土砂災害) 土壌雨量指数基準62
  • 大雨警報(浸水害) 表面雨量指数基準14 コンクリートで覆われた都市部などで、地表にどれだけ水が溜まっているかを計算した「表面雨量指数」を用います。下水道の排水能力を上回る雨が降った場合に発表されます。
  • 大雨注意報(浸水害) 表面雨量指数基準10
  • 洪水警報 流域雨量指数基準、複合基準、指定河川洪水予報による基準を河川流域ごとに設定 流域雨量指数は、雨水が川に集まってくる量と時間を計算した指数です。複合基準は流域雨量指数と表面雨量指数の値です。
  • 洪水注意報警報と同じ指数を用いて河川流域ごとに基準が定められています。

3. 早期注意情報(警報級の可能性)

かつての気象情報は「今、危険が迫っている」というタイミング(当日や前日)で警報や注意報を発表するのが基本でした。しかし、大規模な災害に備えるためには、もっと早くからリスクを知り、準備を始める必要があります。そこで、気象庁は「数日後に警報レベルの荒天になるリスク」を段階的に知らせるこの仕組みを導入しました。

発表のタイミングと仕組み

  • 対象期間: 今日・明日から最大5日先まで。
  • 更新頻度: 毎日、朝(5時)、昼(11時)、夕方(17時)の1日3回、最新の予測に基づいて更新されます。
  • 府県予報区(都道府県単位)および、一次細分区域(県をいくつかに分けた地域)ごとに発表されます。

可能性のレベル:「高」と「中」

警報級の現象が発生する可能性は、その確率や危険度に応じて[高]と[中]の2段階で表現されます。

レベル意味と基準防災上のアクション
[高]警報が発表される可能性が高い状態。
(明日までに[高]となっている場合は、実際に警報が発表される基準を高い確率で満たすと予想されています)
災害への備えを確認し、気象情報に常に注意を払う。イベントの延期や、事前の避難準備などを検討し始める段階。
[中]警報が発表される可能性は[高]ほどではないが、命に危険を及ぼすような災害が発生するおそれがある状態。
(※「可能性がある」程度ではなく、平時と比べると明確にリスクが高まっている状態です)
ハザードマップや避難経路を再確認し、今後の最新情報([高]への引き上げや警報への切り替え)に注意する。
(なし)現時点では、警報級の現象が発生する可能性は低い状態。通常通りの生活を送る。ただし、天候の急変には注意する。

対象となる気象現象

早期注意情報の対象となるのは、以下の6つの現象です。いずれも広範囲に甚大な被害をもたらす可能性のあるものです。

  1. 大雨 (土砂災害、浸水害)
  2. 大雪
  3. 暴風
  4. 暴風雪
  5. 波浪
  6. 高潮

防災上の意義

気象予報の現場や、天気情報をユーザーに届けるシステムにおいて、この「早期注意情報」は以下のような極めて実践的な価値を持っています。

  • 空振りを許容した情報提供:5日先の予測にはどうしても誤差が生じます。そのため[中]や[高]が出ても、結果的に警報が発表されない(空振りになる)こともあります。しかし、「空振りになっても良いから、早めに最悪の事態を想定して準備を促す」ことこそが、この情報の最大の目的です。
  • 「タイムライン(防災行動計画)」の起点:鉄道の計画運休や、自治体の避難所開設準備、あるいは個人の「土嚢を準備する」「買い出しを済ませる」といった行動は、警報が出てからでは間に合いません。早期注意情報の[中]や[高]が出たタイミングをスイッチとして、事前行動を開始することが推奨されています。