気象予報士試験の実技試験では、天気図や気象資料を読み取り、低気圧の移動距離や移動速度などを求めることがあります。そのためには、ノットや海里、緯度・経度、気圧などの単位について、意味と換算方法を理解しておくことが大切です。
この記事では、気象予報士試験で必要となる単位の定義と換算方法を解説します。実技試験で正解率が高い序盤の穴埋め問題で頻出の項目なので必ず覚えましょう。
1. 速度・風速の単位
メートル毎秒(m/s)
メートル毎秒(m/s)は、1秒間に何メートル進むかを表す速度の単位です。秒速とも言われます。
例えば、風速10 m/sは、風が1秒間に10 m進む速さに相当します。
乗り物の速さでは、1時間に進む距離を示した速さである時速 (km/h) が使われますが、気象庁の風速や、気象資料に記載された風の強さを表す際にはm/sが使われます。
ノット(kt)
ノット(knot、記号:kt)は、船舶や航空機の速度、海上の風速などに使われる単位です。国際式天気図など広い範囲の天気図ではノットがよく使われます。
1ノットとは、1時間に1海里進む速さを意味します(海里の説明は後述)。
海里は1,852 mなので、ノットをm/sに換算すると次のようになります。
$$\mathrm{kt}=\frac{1852}{3600}\ \mathrm{m/s}$$
したがって、
- 1 kt ≒ 0.514 m/s
- 1 kt = 1.852 km/h
- 1 m/s ≒ 1.944 kt
となります。
ノットとm/sの換算方法
ノットからm/sに換算する場合は、0.514を掛けます。
風速(m/s)=風速(kt)× 0.514
例えば、風速30 ktの場合は、
30 × 0.514 ≒ 15.4 m/s
となります。
逆に、m/sからノットに換算する場合は、約1.944を掛けます。
風速(kt)=風速(m/s)× 1.944
例えば、風速10 m/sの場合は、
10 × 1.944 ≒ 19.4 kt
となります。
試験で概算する場合は、ノットを2で割るととおおよそのm/sになり、m/sを2倍するとおおよそのノットになります。
2. 距離の単位
メートル(m)とキロメートル(km)
メートル(m)は長さを表す基本的な単位で、キロメートル(km)はその1,000倍です。
- 1 km = 1,000 m
- 1 m = 0.001 km
天気図上の距離や気象現象の広がりを扱う際には、kmがよく使われます。
海里(NM)
海里(nautical mile、記号:NM)は、主に航海や航空などで使用される距離の単位です。
もともとは地球の緯度1°の60分の1の距離として定義され、約1,852mとされていましたが、
現在の国際的な定義では、1海里は正確に1,852 mと定められています。
したがって、
- 1 NM = 1.852 km
- 1 NM = 1,852 m
となります。
海里からkmに換算する場合は、1.852を掛けます。
距離(km)=距離(NM)× 1.852
例えば、100海里なら、
100 × 1.852 = 185.2 km
です。
反対に、kmから海里に換算する場合は、1.852で割ります。
距離(NM)=距離(km)÷ 1.852
なお、海里は陸上で使われるマイルとは異なる単位です。気象資料や海上の情報にNMと記載されている場合は、海里を表します。気象予報士試験には基本的にマイルはでてきません。
3. 緯度・経度と距離の関係
緯度とは?
緯度は、地球上の地点が赤道から南北にどれだけ離れているかを表す角度です。
赤道を緯度0度とし、北極が北緯90度、南極が南緯90度となります。
緯度は度(°)で表し、さらに細かい角度を表すために分(′)や秒(″)を使用します。
- 1度(°)= 60分(′)
- 1分(′)= 60秒(″)
経度とは?
経度は、地球上の地点が本初子午線から東西にどれだけ離れているかを表す角度です。
イギリスのグリニッジを通る本初子午線を経度0度とし、東経・西経それぞれ180度まで表します。
緯度と経度は、地球上の位置を示すために使用され、天気図上で低気圧や高気圧の中心位置を確認する際にも重要です。
緯度1度は何km?
地球は完全な球体ではありませんが、試験では次の近似関係を利用できます。
- 緯度1度 ≒ 111 km
- 緯度1分 ≒ 1.852 km=1海里
- 緯度1度 = 60分
緯度1度に相当する距離を概算すると、
60 × 1.852 = 111.12 km
となります。
そのため、緯度の差から南北方向の距離を求める場合は、次の式を使います。
南北方向の距離(km)≒ 緯度の差(度)× 111
例えば、北緯30度から北緯32度までの南北方向の距離は、
(32 − 30)× 111 = 222 km
となります。
緯度と海里の関係
上述の通り、海里は、もともと地球の緯度に関連づけられた単位です。現在の海里は1,852 mと正確に定義されていますが、地球の形状などの影響により、緯度1分の実際の距離が常に正確に1海里になるわけではありません。
それでも、気象予報士試験の距離計算では、次の関係を近似値として利用できます。
- 緯度1分 ≒ 1海里
- 緯度1度 ≒ 60海里
- 緯度1度 ≒ 111 km
例えば、南北方向に120海里移動した場合、緯度の差はおよそ、
120 ÷ 60 = 2度
となります。
経度の差から距離を求める場合の注意点
緯度と異なり、経度1度に相当する距離は緯度によって変化します。
赤道付近では経度1度の距離は約111 kmですが、緯度が高くなるほど短くなり、極ではほぼ0になります。
球体とみなした地球での概算では、緯度を (\phi) とすると、経度1度に相当する距離は次の式で表せます。
[
\text{経度1度の距離}\approx111\cos\phi\ \mathrm{km}
]
例えば、北緯60度では (\cos60^\circ=0.5) なので、経度1度の距離は約55.5 kmです。
このため、経度の差だけから距離を求める場合は、緯度も考慮する必要があります。
このように経度をもとに距離を求めるのは非常に複雑なため、距離を求めるときは、1°≒111kmと決まっている緯度を基準に求めることになります。
4. 低気圧の移動距離・移動速度の計算
ノットと海里の関係を理解しておくと、低気圧や高気圧の移動速度を計算するときに役立ちます。
移動距離の求め方
速度と時間が分かっている場合、移動距離は次の式で求められます。
移動距離=移動速度×移動時間
ノットは「1時間に何海里進むか」を表すため、速度をkt、時間を時間単位で表すと、移動距離は海里で求められます。
例えば、低気圧が20 ktで6時間移動した場合、
20 × 6 = 120海里
です。
kmに換算すると、
120 × 1.852 = 222.24 km
となり、約222 kmです。
移動速度の求め方
移動距離と移動時間が分かっている場合、移動速度は次の式で求められます。
移動速度=移動距離÷移動時間
例えば、低気圧が150海里を5時間で移動した場合、
150 ÷ 5 = 30 kt
となります。
このように、海里とノットを使えば、kmやm/sに換算することなく計算できるため、計算を簡単にできます。
ただし、天気図上の2地点間の距離を測定する場合は、問題文で指定された縮尺や距離の求め方に従いましょう。また、南北方向の距離と、実際の移動経路に沿った距離は必ずしも一致しません。
5. 気圧の単位:パスカル(Pa)とヘクトパスカル(hPa)
気圧とは?
気圧は、ある面に加わる大気の圧力を表します。地上天気図では、低気圧や高気圧の中心気圧、等圧線などを読み取る際に使用します。
パスカル(Pa)の定義
パスカル(Pa)は、圧力の国際単位系(SI)における単位です。
圧力は、単位面積当たりに加わる力として定義されます。
1 Pa = 1 N/m²
つまり、1平方メートル当たりに1ニュートンの力が加わるときの圧力が1 Paです。
ヘクトパスカル(hPa)の定義
ヘクトパスカル(hPa)は、パスカルの100倍を表す単位です。「ヘクト」は100倍を意味します。
通常気象分野ではhPaを使います。
- 1 hPa = 100 Pa
- 1 Pa = 0.01 hPa
例えば、1,005 hPaをPaに換算すると、
1,005 × 100 = 100,500 Pa
となります。
逆に、PaからhPaに換算する場合は100で割ります。
6. 気象予報士試験で覚えておきたい換算一覧
| 項目(定義) | 換算値 |
|---|---|
| 1 kt(1時間に1海里進む速さ) | 約0.514 m/s=約1.852km/h |
| 1海里(1,852m およそ緯度1°の60分の1) | 1,852 m |
| 緯度1度 | 約111 km、約60海里 |
| 1 km | 1,000 m |
| 1 Pa(1N/m²) | 0.01 hPa |
7. まとめ
気象予報士試験の実技試験では、単位の意味を理解したうえで、必要な換算を素早く行えるようにしておくことが重要です。
特に、次の関係は優先して覚えておきましょう。
- 1 kt ≒ 0.514 m/s
- 1海里 = 1.852 km
- 緯度1度 ≒ 111 km ≒ 60海里
また、緯度1度に相当する距離は約111 kmですが、経度1度に相当する距離は緯度によって異なります。この違いも理解しておくと、天気図上の位置や移動距離を考える際に役立ちます。
