第55回実技2 問4(1)

①950hPaから700hPaの温度移流の強弱についてですが、なんとなく風速が大きく温度傾度も大きそうな30日9時のほうが温度移流が強く、21時の方が弱いような気がしますが、もう少し理論的に見ていきます。まず温度移流の強さは温度傾度と温度傾度方向の風の成分の積で表されます。温度傾度が大きくなれば温度移流は強くなりますし、温度傾度の方向に向かう風が強くなれば温度移流は強くなります。

まず温度傾度を求めるには、下記のように、上の図の950hPaと700hPaの風向風速から温度風を求めます。

まず、9時の温度風の大きさと方向です。温度風の大きさは温度傾度の大きさ、温度風の方向は温度傾度の方向と直交した方向を表します。この場合北北西から南南東に向かって温度が高くなっています。オレンジの破線で示されるのが950hPaから700hPaの風の温度傾度方向成分の風の大きさです。

次に21時です。9時よりも温度風が弱く、温度傾度が小さいことがわかります。オレンジの破線で示される温度傾度方向成分の風の大きさも小さく、温度移流が弱いことがわかります。

もっと深めますと、温度移流の強さが、温度傾度と温度傾度方向の風の成分の積で表されますと述べましたが、これは温度風の長さ×オレンジの破線の長さに対応しており、相対的にこれらの温度風と上層下層の風のベクトルで作られる三角形の面積に対応することになります。もちろん9時のほうが三角形の面積が大きく温度移流が強いのです。

温度移流が弱いのは21時です。

②どちらが低温側かということですが、これも温度風の方向から求めることができます。21時の温度風の方向は

東北東を向いています。ですが問題の指示では8方位で答えよとのことなので、ほぼ東向きとします。温度風は北半球においては低温側を左側に見て吹くので、温度風が東向きのとき、低温側はとなります。理由は前述のとおり、温度風が西から東に向いているため。(17字)